水色の過去とオレンジ色の未来
11話目 初めて見る笑顔
5月6日 AM 11:56⇒
ゴールデンウィーク最終日なので昼でバイトが終わった。
体力的にはキツいけど自然の中は気持ちいい。
でも、オレ的にはこの仕事は向いていないと思う。
「涼祐、帰りに風呂入っていくか」
「いいですね」
「右手完璧にかぶれてるわ、痒いなーほれ」
「うわっ、オレに触らないでくださいよ」
PM 5:25⇒
今日は何もする気になれなかった。
連休最後の日なのに。
彼氏もいないし……
新しい学校に行けば、彼氏できるかな?
ぼーっと過ごしていると、窓の外が少しオレンジ色になってきた。
時計を見ると、5時を回っていた。
昨日買ったコーヒーカップを箱から出した。
明るいオレンジ色のコーヒーカップ。
並べて置いてみた。
りょうすけにあげようとしたカップ。
彼のことを何も知らない……
あたしは、ただのお向かいさん。
バカはあたしだ。
少し泣きそうになった。
PM 7:38⇒
「涼祐おかえり」
「由美さん、ただいま」
「なんかサッパリしてるわね」
「お風呂入ってきたから」
「えっ、どっどこの?」
「どこのって駅の近くの」
「なんだ、銭湯ねハハ」
「いやらしいこと考えてたしょ」
「そんなことないよ」
この人、来年こそは卒業できるのかな〜
「涼祐」
千尋さんが管理人室から顔を出した。
「なに?」
「部屋に行くついでに、リオちゃんにこれ渡しておいて」
同じ学校だ…
転入に関する書類のようだ。
……同じ高校なんだ
「うん、いいよ」
「涼祐ちゃん」
「みやちん、なに?」
「今日さ、リオちゃん元気ないんだー」
「そうなんだ」
「涼祐ちゃん、なんかあった?」
「えっ、なんでオレが関係あるの?」
「りょーすけー、なーんかしたのかい?」
「ちょっちょっ千尋さん、なんもないって」
「怪しい〜」
「みやちん、話をややこしくしないでよ」
なんなの?いきなりなこの展開は
「だってオレ、昨日帰ってきてないじゃん」
「いやらしー」
「みやちん!」
「あんまり派手なことしたら涼香に言いつけるからね」
「千尋さん、それは勘弁してよ」
「みんなで涼祐兄ちゃんをいじめたらダメだよ」
千亜がぬいぐるみ片手に現れた。
かわいい天使に助けられた。
ピンクのブタのぬいぐるみ……千亜の宝物だ。
それを見たら胸が痛くなった。
PM 7:55⇒
『トントン』
部屋のドアがなった。
「あの、どうぞです」
あっ、りょうすけ。
「これ、千尋さんから渡してって」
「ありがと」
「明日から、学校だね」
「うん、緊張する」
「そっか、そうだね」
微妙に重たい雰囲気、りょうすけの顔を見れないあたし。
「大丈夫、すぐに友達だってできるさ」
「だといいけど」
「オレも同じ学校だし」
「そうなんだ。えっ? うそっ」
「これがホントなんだな〜」
りょうすけと同じ学校か〜なんかうれしい!
「困ったことがあったら相談してくれ」
「ありがとう!」
りょうすけって優しい。
「君を困らすわけにはいかないからね」
「?」
「千尋さんに怒られるから」
前言撤回!
りょうすけって意地悪だ。
あたしは少しふてくされながら涼祐を見た。
「かわいいね、そのコーヒーカップ」
りょうすけに渡そうと思っていたコーヒーカップ。
褒められちゃった。
「うん、ありがと」
「オレンジ色好きなの?」
「あたしの一番好きな色なんだ」
「オレもその色好きだよ」
「ホント?」
「ホントだよ」
「片…えーっと」
「涼祐でいいよ、涼しいにカタカナのネに右で涼祐」
涼しいに祐で涼祐ね。
「じゃぁ、あたしもリオでいいよ」
「リオねOK」
「あの、このカップ……」
「なに?」
「この前、コーヒーご馳走になった」
「うん、そうだね」
「だから、その、それ」
「オレにくれるの?」
「うん」
なんか、恥ずかしくなってきたかも。
「でもさ、かわいそうでない?」
「かわいそう?」
「別々になっちゃうでしょ。せっかくセットなのに」
「そっか」
「あのさ、両方ちょうだいダメ?」
「うん、いいよ」
「リオがオレの部屋でコーヒー飲むときに使うから」
「えっ?」
「リオ専用カップってこと」
「専用?」
「オレと一緒にコーヒーを飲むときに使うの」
「一緒に飲むとき?」
「オレも普段は使わない」
「なんで?」
「セットだからね、普段は別の使うよ」
「あたしと飲むときだけ?」
「リオからのプレゼントだから、大事に使わなきゃ」
「うん、ありがとう♪」
涼祐、やっぱ優しい。
「あっオレの部屋きても、裸にならないでね」
「……」
やっぱ意地悪だ。
「ホントはなってくれた方が嬉しいけどね」
あたしはうつむきながら、少し怒った顔で上目遣いに涼祐を見た。
いたずらっぽく涼祐が笑っていた。
涼祐が笑ってくれた。
あたしに笑ってくれた。
うれしいー!
あれ?
この間、知り合ったばっかりだよね。
なんでこんなにうれしいんだろ?
これって、これって
ほとんど一目惚れ?
涼祐のこと好きになってるってこと?
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