Nazca Novels 恋鍋〜鍋ちゃん子の恋

第1話 鍋ちゃん子の意味

アイツとは小学校から今の高校まで一緒だ。
勉強は私の方がずっと上。(ちょっと自慢)
たまに学校をサボるし、遅刻もする。
だけど、明るい性格で女の子にけっこうモテる。
ルックスはまあまあ良い方だからかな?
アイツの周りはいつも笑いが絶えない。
あんな男のどこが良いというのだ?

「鍋ちゃん子、後でノート見せてくれ」
「授業中寝ないでちゃんと勉強しなさいよ」
「そんなこと言うなって、愛してるから」
「気持ち悪いこと言わないでよ」

私は背が低い。
身長は小学6年になったときに止まった。
それまではアイツの方が低かった。
私はチビ男と呼んでからかっていた。

神様は私に罰を与えた。

アイツと出会っていなければ私の身長も伸びていたはず…
だから私はアイツが大嫌いだ。

鍋屋泉菜…私の本名。
ちゃん子…ちゃんこい(小さい)からちゃん子。
鍋屋だから鍋ちゃん子。
こんなあだ名を付けやがって。
今やクラスのほとんどの人が私を『ちゃん子』と呼ぶ。
アイツが許せない。
しかも最近は視力が落ちてきたので眼鏡をかけた。
めちゃん子と呼ばれる回数も増加中である。
全部アイツのせいだ。
しかも図々しいお願い事まで平気でしてくる。
腹立つ、腹立つ、腹立つわー!

「ちゃん子、どうしたの?怖い顔しちゃって」
「うわっ、美世」
「なんか黒いオーラが出てる気がするよ」
「そんなことないよ」
「お昼食べよ」

腹が立ったせいでお腹も減った。
お腹が減ると、身長まで縮むような気がする。
私の現在の身長は143.5センチメートル。
ほぼ、小学6年から変わっていない。
牛乳をこれでもかって飲んでも効果無し。
鉄棒にぶら下がっても効果無し。
中学の時はバレー部に入った。
バレーをやると身長が伸びると友達に言われたからだ。
しかし、これまた全く効果無し。
身長が伸びるってサプリも当然効果は無かった。

「なんか考え事してるの?」
「美世はいいよね〜背があってさぁ」
「ちゃん子は小さいからいいんじゃないの」
「あと10センチは欲しいよ」
「私はもっと胸が欲しいよ」
「十分あるでしょ〜贅沢すぎるよ」
「ちゃん子は私より大きいからそんなことが言えるのよ」
「胸より背だよ」
「背より胸よ」

人にはそれぞれ悩みがある。
他人には大したことではなくても、本人は泣きたいくらい重たい悩み。
小学生に間違えられたりするのは当たり前。
よく間違えられるから、もうそれには慣れた。
だけど、大人びた小学生ねって言われたときは激しく脱力した。
要するに老けた小学生だと思われただけ…
ちなみにこの前、小6の妹にジーンズを貰った。(妹は152センチ)
もう小さくなったからお姉ちゃんにあげるって言われた。
妹のお下がり…裾上げしないとちょっと大きい。

アイツをチビ男と呼ばなければ天罰は下されなかったかもしれない。
ひょっとしたらアイツにあの時のことを謝れば背が伸びるかも……
って、そんなことになるワケがないか。

高校に入ったら、私だって彼氏が欲しい。
彼氏とラブラブしたい。
高1の時、男子生徒の会話が偶然耳に入った。

「鍋屋ってけっこうカワイイよな」
「だけどさぁ、周りからアイツは小学生と付き合っているぞって言われるぞ」
「そっか、ただのロリコン野郎って思われちゃうな〜」
「だろ、ハハハハ」

猛烈にショックだった。
私はその次の日から勉強に専念した。
せめて勉強くらいできないと、バカにされるだけの日々を過ごすと思った。
人から一目置かれる立場にいたい。
そうしないと居場所が無くなるから……

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