Nazca Novels 女子高生の計画的同棲

第19話 大人の女

ほんわかな笑顔の桐乃ちゃん。
お酒が彼女を上機嫌にさせている。
彼女は嬉しそうに僕に抱きついてきた。

「これからどこ行くんです?」
「特に決めていないよ」
「それじゃ一緒に飲みましょう」

桐乃ちゃんになかば強引に誘われた。
後ろで岩尾別が何か言いたそうな顔をしていた。
僕は岩尾別にお前も来いよと手で合図をした。
彼は渋々後ろからついてきた。

「乾杯」

岩尾別に桐乃ちゃんを紹介した。
彼は丁寧に挨拶と自己紹介をして名刺を手渡した。
しばらく仕事の話や高校時代の僕の話で盛り上がった。

「先輩は彼女いないんですか?」

唐突に桐乃ちゃんが聞いてきた。
僕は少しだけ固まった。

「ヤナミー、実際ホントはどうなんだ?」

真面目な顔で岩尾別が聞いてきた。
隣の桐乃ちゃんは身を乗り出してきた。
少しだけ悩んだけど、僕は本当のことを話した。
由菜との出会いから今現在のまでの状況を。

「やっぱりな。引っかかってはいたんだよ」
「とりあえず卒業までは何とかしてあげないとね」
「先輩大変ですね」

酒が入っていなかったら言わなかったかもしれない。
由菜を裏切ってしまったような気持ちになった。

いや待てよ、裏切っちゃいないさ。

十分すぎるほどのことはしてあげている。
騙されたのにもかかわらず、住まわせてあげているんだ。
これほどのお人好しがどこにいるっていうのだ。
喜之助、君は凄く偉いんだよ。
そう自分に言い聞かせた。

「だけどヤナミー、由菜ちゃんのことはちゃんと見てやれよ」
「分かっているよ」

岩尾別の言った言葉の意味。
僕の答えた言葉の意味。
かけ合った言葉は通じてはいなかった。
その言葉の意味を僕は後々理解することになる。

「それじゃな」

岩尾別はタクシーに乗り込んで行ってしまった。
時刻は夜中の2時を過ぎている。

「私はまだ帰りたくないな」
「もうこんな時間だよ」
「そうですよね」

先に桐乃ちゃんの乗るタクシーを見つけないといけない。
そのタクシーがなかなか見つからない。

「見つからないですね」
「少し歩けば見つかるさ」

イマイチ場所が悪い。
もう少し広い通りに出よう。
僕はそう思い歩き出そうとした。
それを引き止めるように彼女の手が僕の右手を掴んだ。

「桐乃ちゃ」

言い終わる前にキスで塞がれた。
押されるように僕の背中はビルの壁にぶつかった。
突然の出来事に対応できず、そのままビルとビルの間に入った。
唇が離れ彼女が上目遣いで一瞬僕を見た。
それは一度も見たことのなかった彼女の表情だった。
目が合った途端、再びキスをされた。
彼女の手が僕の背中をきつく抱きしめる。
由菜とは違う大人の香り。
僕の両手は彼女を強く抱きしめていた。


◇◇


彼女の両手が窓をあてがう。
僕は後ろから彼女を抱きしめる。
彼女の息が窓を曇らせる。
髪は乱れ、助けを求めるように右手はカーテンを掴む。
窓には裸の二人が霞むように映っている。
膝から崩れ落ちた彼女を僕はベッドに連れて行った。
僕の上で乱れる彼女。
倒れ込むように僕の唇を求めた。
揺れ軋むベッドの上。
僕は上になり、激しく彼女を抱いた。

「しばらく動けないかも」

そう言って彼女は目を閉じた。
窓の向こうは少しだけ明るくなってきていた。
テーブルの上に置いた携帯が点滅している。

『やっぱ寝てるよね。なんか眠れないんだぁ〜』

由菜からのメール。
僕はそれに気づかずに眠ってしまった。


◇◇


「おはようございます」

それは聞き慣れた由菜の声ではなかった。
ぼんやりと目を開けると裸の桐乃ちゃんが微笑んでいた。

「あ…おはよう」

僕は中途半端な感じで彼女に答えた。
クスッと笑う桐乃ちゃん。
そして、僕に馬乗りになってキスをした。

「今日は私の部屋に泊まってほしいな。ダメ?」

甘えたように今度は首筋にキスをした。
高校の後輩……昨日まで僕は彼女をそう見ていた。
あの時のままのあどけない女の子。
止まっていた記憶は一気に進み、大人の女になっていた。

「えへっ、なんか当たってますよ」

頬を赤くしながら彼女は言った。
そして、少しずつ僕の視界から消えていった。

「……桐乃ちゃん」

テーブルの上では携帯が点滅していた。

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