Nazca Novels 女子高生の計画的同棲

第18話 会いたかったの

8月最後の休み。
蒸し暑い朝が始まっていた。
夏はいつまで続くのだろう。
ひょっとして、ずっと夏のままなのでないか?
そんなことを半分眠りながら考えていた。
すぐ隣で由菜の寝息が聞こえている。
甘い爽やかな香りが、少しだけ蒸し暑さを解消してくれる。
僕は少し目を開けて由菜を見た。
白いタンクトップがカーテンを閉めた部屋に眩しく映った。
その隙間から少しだけ、日に焼けた水着の跡が見える。
そして、その先には日に焼けていない白い肌が見える。
さらにその向こうには薄桃色の……
もう少しで美味しく食べられそうな果物のような膨らみ。

『大型の台風は急速に発達しています』

寝起きの影響もあって僕の台風は急速に発達していった。
勢力は衰えるどころか、暴風域を拡大しながら勢力を強めていった。
由菜との同棲生活がそろそろ2ヶ月になる。
そろそろ……そろそろなんです。僕もいろいろと。
まだまだ元気な男の子なんですから。

昨夜は由菜がほっぺたにキスをした。
ずっとそばにいるからねと言った。

食べちゃっていいの?

朝っぱらから何を考えているんだ!
下半身で考えちゃダメだ。

僕は寝返りを打って由菜に背を向けた。
無理矢理仕事のことを考えた。
少しして台風の勢力は衰えていった。

『ムギュッ』

がはっ。

「おはよ」

背中に感じる柔らかい感触。
耳元で囁かれて鳥肌の立つ感覚。
台風は再び勢力を回復していった。
最近の由菜はずいぶんとくっついてくる。
むかつくツンデレキャラはどこに行ってしまったのだろう。

「もう少しだけ寝る」
「朝ご飯できたら起こしてあげるね」

悶々としながら寝たふりをしていた。
いっこうに衰えない僕の台風。
このままじゃ災害が起こるぞ。
歌舞伎町にでも行ってこようかなぁ。

「トースト焼けるから起きてよ」

由菜の声が聞こえてきた。
声の後からコーヒーの香りがしてきた。
コーヒーの香りが僕を落ち着かせてくれた。

「夏休みも終わっちゃうな」

つまらなそうな表情で由菜は言った。
そういえば、夏休みだったから由菜は毎日部屋にいたんだ。
いつから夏休みだったのかハッキリしないなぁ。
それにしても、これだけ休んでもまだ足りないようである。

「十分休んだだろう」
「あ〜ずっと家にいたから、私のこと飽きちゃったんだ」
「違いますって」
「ぶぅ〜」

ふて腐れている表情がかわいい。
僕を睨みつける視線が前とは明らかに違う。
敵意のある視線ではない、優しい視線。
少しだけ恥ずかしそうに僕を見つめる。
しばらく見つめ合って互いに恥ずかしくなった。
由菜はコーヒーカップの中に視線を移した。

本当にずっとそばにいてくれるの?

そんなわけないな。
高校を卒業したらどこかに行ってしまうだろう。
何事もなかったようにサヨナラするのだろう。
ちょっとした思い出にくらいにはなるのかな?
せめて思い出くらいにはなってほしいな。
僕は一生忘れられない思い出になるから。


◆◆◆


9月になり由菜が学校へ通うようになった。
連日のように30度を超える暑い毎日がまだ続いている。

「ねぇ、今週の金土は軽井沢に行ってくるの……いいかな」
「軽井沢か、別荘とかに泊まるの?」
「クラスの友達の別荘なんだ」

クラスに必ずいる金持ちのお嬢様か。
別荘なんて庶民には手が届かない代物だ。

「楽しんでおいで」
「メールするから」
「無理にしなくていいよ」
「あ〜イヤなんだ」

怒ったような表情で僕を睨んだ。
こういうやり取りは面倒くさいんだよな。
やっぱ全然まだ子供だな。

「女連れ込んだら火着けるから」

重苦しい空気が流れ始めてきた。
久しぶりに見る由菜の怖い表情だ。

「連れ込みませんよ」
「ホント?」
「神に誓います」
「じゃあ許す」

来週末は羽を伸ばせられるな。
久しぶりに飲みに行こう。
たまには息抜きも必要だよ。
いろいろと気を遣っているのだから。


◇◇


金曜の夜になった。
日曜まで由菜は帰ってこない。
久しぶりの自由。
思いきり満喫したい。

「乾杯♪」

会社の仲の良い連中と西新宿で飲むことになった。
和風ダイニングのオシャレな居酒屋だ。

「梁水さんは彼女いないんですか?」

後輩の女性社員に質問された。
僕はチラッと岩尾別の顔を見た。
いないと言ったらアイツに後でなんて言われるだろう。
またバカ長い説教を聞かされる羽目になる。

「彼女はいるよ」
「そうなんですか。そんな素振り全然見せないから」

見せられるワケがない。
世間一般的には25が18の女子高生と付き合っているなんて、どう考えてもロリコン野郎って風にしか見てくれない。

「残念。私、梁水さんを狙っていたのに〜」

社内でもかわいいと評判の水島さん。
愛想も良くて仕事も丁寧できちんとこなす。
彼女に狙われていたのか……それは僕にとっても残念だよ。

次は酔った勢いでボウリングをした。
チーム対抗になって盛り上がった。
久しぶりに思いきり楽しんだ気がする。
もう一軒、岩尾別とでも行っちゃおうかな。

「お疲れ様でした」

外に出てみんなと別れた。
また来月に飲もうってことになった。
みんなといろいろ話せて良かった。

「先輩?」

後ろから声をかけられた。
僕は声のする方に振り返った。
そこに立っていたのは桐乃ちゃんだった。

「桐乃ちゃん」
「凄いです」

凄いって何が凄いのだろう。
不思議に思いながら彼女を見た。
けっこういい感じに酔っている彼女。

「私ね、先輩に会いたいって思っていたところだったんです」

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