Nazca Novels 女子高生の計画的同棲

第17話 前兆…立ちこめる暗雲

あれから一週間が経った。
まだまだ暑い夏は終わってくれない。
せめて30℃前後で推移して頂けたらと思う。

「ついに無くなっちゃったね」

土曜の朝、最後の納豆を食べた。
粘っこい一週間だった。
納豆三昧の毎日だった。
そぼろ納豆丼。
納豆とチキンのサラダ。
納豆チャーハン。
激辛納豆スープカレー
意外にこれらは美味しかった。
納豆はスープカレーにグッドマッチだった。
ただし、納豆シチューだけはいただけなかった。
由菜もこれには納得していた。

「クリームソース系はダメかも」

結局、最後は普通に醤油をかけて食べた。
うん。これが一番美味しかった。

「やっぱりお醤油で普通に食べるのが一番だね」

部屋中に納豆臭が漂う中、爽やかな笑顔で由菜が笑った。
この一週間、よくぞ納豆料理を頑張ってくれた。
バリエーションが多彩だったので楽しめた。

「今度はどこの博物館行こっか」
「食べ物以外の博物館にしようね」

また同じ食材が一週間……絶対にイヤだ。

『バンバラバンバンバン』

由菜の携帯が鳴った。

「もしもし、久しぶり〜お姉ちゃん元気だった?」

どうやら彼氏と同棲中のいとこのお姉さんらしい。
しばらく会話が続いた。

「ウソ、マジで別れたの?」

どうやら別れたらしい。早いな。

「……あとで電話するね」

由菜の表情が暗くなった。
お姉ちゃん思いのいい子じゃないか。
待てよ、ひょっとして戻っておいでって言われたのか?
ついに元の生活に戻れる日が来るのか?
やっと自由な日々を満喫できるぞ。
素っ裸で部屋中を歩けるし、ウンコだって10分待たなくていい。
やっと静かに生活ができる。
振り返ってみれば短い間だったな〜
でもこれは由菜にとってもいいことなんだよ。


由菜がいなくなってしまう……


あれ? 凄く寂しくなってきた。
なんだか悲しくなってきた。
普通じゃない毎日が普通になっていた。
あり得ない生活が当たり前になっていた。

そんな生活が突然終わってしまう……


◇◇


私をお嫁さんにしてくれるって言ってくれた。
小さな私はあの時の言葉を本気で受け止めた。
大人に見えたキイちゃんがかっこよく映った。
同じくらいの歳の男の子は苦手だ。
子供過ぎるし、エッチなことしか考えていないみたいで。
考えていることがすぐに分かってしまって幻滅する。
みんながそうではないと思うけど、やっぱりイヤだな。
たぶん私がそんな風に思うのは、あの時のキイちゃんの言葉のせい。
小学生の私を年上好みにさせたのは、キイちゃんが結婚しようって言ったから。
あの日以来、年上好みは変わっていない。

街で偶然見かけたときは運命だと思った。
絶対に一緒になるって心に決めた。
私のことを覚えていないのはショックだけど、優しい笑顔はあの時のまま。
だから絶対に思い出させてやるんだ。
思い出してくれたときは、ご褒美に私をあげちゃうんだよ。
すごく幸せな気持ちになって裸で抱き合って眠るんだ。
その日を待ち望んでいるのに……

「やっぱ私はキノしかいないのかな〜より戻そうかなぁ」

冗談じゃない。冗談じゃないよ!
お姉ちゃんなんか大嫌い。
自分のことしか考えないでバカじゃない。
キイちゃんはお姉ちゃんのオモチャじゃないんだから。

由菜のものなんだから。


◇◇


ここ最近の由菜はツンデレが抜けて優しい女の子になりつつある。
お姉ちゃんから電話が来るまではそうだった。
ところがどっこい今は重苦しい状況だ。
何か思いつめた表情をしている。
本当に戻っておいでと言われたのか?
それでオレと別れるのが寂しくなっているのか?

由菜、オレも寂しいよ。

マジでそう思っているよ。
だけど、しょうがないんだよ。
元々が無理な設定の同棲なんだから。

「キイちゃん」
「なに?」

呼んでおきながら、由菜は黙ったままだった。
それでも何か言いたそうな顔をしている。

「どうした?」

僕は優しく由菜に言った。

「元カノからやり直したいって言われたらどうするの?」

全く予想していなかった質問が飛び出した。
由菜はお姉ちゃんと何の話をしたのだ?

「やっぱやり直すの?」

元カノ……アイツとは何回別れて何回くっついたのだろう。
置き手紙でさよならを告げていったアイツ。
あれっきり電話もメールもしていない。
向こうからも何の連絡もない。
さすがにやり直したいとは思わない。

「100%ないね」
「100%ないの?」
「ないよ」

由菜はソファに座った。
そして、僕に隣に座るよう手で合図をした。
僕は由菜の隣に腰を降ろした。

「へへっ」

恥ずかしそうに由菜が笑った。
甘える子猫のようでかわいい。
だけど、ちょっと不気味だ。

「100パーないんだ」
「ないよ」

けっこうしつこいな。
オレのことはどうでもいいだろう。
やっぱり女子高生はよく分からんな。

「問題なし!」
「何の?」
「何でもなーい」

急に元気になりやがった。
お姉ちゃんのトコには帰らないのか?
聞くとまた怒るから聞けないし。

「ねえねえ」
「ん?」
「ずっとそばにいるからね」

そう言って由菜は僕の頬にキスをした。
ずっとそばにって……マジで?

状況を全く理解できない喜之助。
隣でご機嫌な由菜。
由菜はお姉ちゃんに勝った気でいる。
だがしかし、大人の女は簡単には負けないのである。

今までは由菜の思惑通りに計画が進んでいた。
不吉な前兆……
由菜の計画に暗雲が立ちこめてきた。

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