Nazca Novels 女子高生の計画的同棲

第16話 博物館でラブラブ?

腕がくすぐったくて目が覚めた。
由菜の寝息が僕の腕に当たっていた。
いきなりの至近距離にドキッとしてしまった。
逃げるように上体を起こし、壁掛け時計を見た。
時計の針は9時を少し回っていた。

「9時か」

そのまま僕は、なにげに視線を下にずらした。


うがまっ!


やや半ケツ……

無防備状態の女の子がもう一人眠っていた。
おかげで血圧が激しく急上昇した。
僕はそっと部屋を出て顔を洗い、歯を磨いた。
バスタブにお湯を入れて朝風呂にした。

「あふ〜」

お湯に入って眠気を吹き飛ばした。
朝風呂から出た僕はアイスコーヒーを飲んでまったりした。
外は既に日差しが強くて、暑そうだった。

「おはようございます」

祥子ちゃんが起きてきた。
眠そうな顔がかわいかった。
それと当時にさっきのやや半ケツの谷間を思い出した。
彼女の顔を見るのが恥ずかしくなった。

「お風呂に入っていたんですか?」
「うん。あのさ、ベッチってやっぱり岩尾別のこと?」
「そうですよ」

ニコニコしながら祥子ちゃんは答えた。
ちょっとだけ心配になってきた。
大丈夫かベッチ……いや、岩尾別よ。
三面記事を飾るようなことはするなよ。

「おは〜」

アクビをしながら由菜が起きてきた。
今にもまた眠りそうな顔だった。

「シャワーを借りていいですか?」
「どうぞ」

祥子ちゃんは小走りにバスルームに入っていった。

「私も一緒に入る」

追いかけるように由菜も入っていった。
すぐにバスルームは騒がしくなった。
お湯入れておいて良かったかな。
彼女達がリビングに戻ってきたのは40分後だった。

「でさぁ〜どこに行くの?」

由菜が祥子ちゃんのデートの行き先を聞いた。
知りたくてしょうがないって感じだ。
いちいち知りたがる……まだまだガキだな。

「知りたい?」
「知りた〜い」

祥子ちゃんはミルクティを一口飲んだ。
そして、行き先を答えた。

「寄生虫館だよ」
「ブッ」

由菜は固まり、僕はアイスコーヒーを吹き出した。
爽やかな朝の雰囲気が急にドロドロに変色していった。
それと、何となくお腹の調子が悪くなってきた。

「祥子、初デートになぜ?」

当然そう聞くだろうな。
あまりにもマニアックすぎるだろソレ。

「ベッチは面白そうだねって言ってくれたもん」

口を尖らせながら祥子ちゃんは言った。
だけど、普通は女子高生が寄生虫館に行きたいって言わないわな。
虫が好きって子は少しはいるかもしれないけど、虫っていっても寄生虫だものなぁ。

「だってね、寄生虫のTシャツとか、携帯のストラップとかあるんだよ。凄くない?」

そりゃ確かに凄いな。
そう言われると妙に行ってみたくもなるかも……って、なるか?

「ちょっと行ってみたいかも」

なるんかい!

「初デートで寄生虫館って私的にはリア充フラグ満開だよ」

寄生虫に囲まれてデート → リア充 = 祥子ちゃん、レベル高すぎ。
君の現実世界の介入は難しすぎるからスルーさせてもらうよ。
だって僕には難攻不落の由菜ちゃんがいるからね。
これだけで毎日がいっぱいいっぱいなんです。

『プップー』

窓の向こうからクラクションの音が聞こえてきた。

「ベッチーが来ちゃったよ♪ じゃあ行ってくるね」
「祥子、頑張ってね」
「マジで頑張るよぅ」

祥子ちゃんの気合いが伝わってきた。ベッチからベッチーに変わってるし
岩尾別よ、マジでいかがわしいことはするなよ。

―― 急に静かになった。

僕はチラッと由菜の方を見た。
ソファに膝を抱えながら僕を見ていた。
何か言いたそうな顔をしている。

「どうしたのかな? 由菜ちゃん」
「やめてキモイ」

速攻で気持ち悪がられた。
だけど、やっぱり何か言いたそうな顔をしてまだ僕を見ている。
もったいぶるのもかわいそうだね。

「デートしよっか」
「うん♪」

行った途端、由菜は大急ぎで用意をしだした。
ホントは家でのんびりしていたいけど、あんなかわいい表情をされると出かけないわけにはいかないよな。
親友の祥子ちゃんはデートなのに、私は家の中でつまんないって感じだもの。
とはいっても、どこに連れて行けばいいのかサッパリだな。
面倒だから由菜の行きたいところに連れて行くか。

それにしても支度する時間が長いな〜

「お待たせ」

ケープ風のトップス+カーゴパンツの出で立ちで由菜は現れた。
少し大人っぽい雰囲気だった。

あ…由菜が化粧している。

時間がかかったのはその作業に時間を費やしていたからか。
それにしても変わっちゃうんだな女の子って。
急に大人の女性にキャラチェンした由菜に驚かされた。

「キレイでかわいいよ」
「……」

由菜は恥ずかしそうに下を向いた。

「行こうか」

由菜は何も言わず手を繋いできた。
うむ〜、いつもと勝手が違うなぁ。
なんか恥ずかしくなってきたぞ。

手を繋いだ僕と由菜は会話もせずに駐車場まで歩いた。
3分ほど歩いて駐車場に着いた。
僕は繋いだ手を離そうとした。

『ぎゅっ』

その瞬間、由菜は僕の手を強く握りしめた。
そして、潤んだ瞳で僕を見つめた。

あれ? なんかドキドキしてきた。

そう思った途端、繋いだ手が自然に離れた。
急に現実に戻された気持ちになった。

「由菜はどこに行きたい?」
「う〜ん」

しばらくの間、由菜は考え込んだ。
人があふれているような場所には行きたくないな。
静かな所でデートなるものを楽しみたいな。



「納豆博物館」



ナンデスカソレ?

てか、せっかくいい雰囲気だったのに台無しじゃん。
キレイでかわいいよって言ったオレってバカみたいじゃん。
繋いだ手を離したくないなって思って損したじゃん。
女子高生にドキドキしたオレってメッチャ恥ずかしいじゃん。

「も〜なんで固まっているのよ」
「そんなトコあるの?」
「納豆好きだもん」
「それ答えになっていないから」
「水戸に行けばあるかも」
「かもかい!」
「いいの!行ってみたいの」

茨城に行くことになった。
なんだか寄生虫館に対抗したって感じなんですけど。
変なトコにライバル心を燃やさないでいただきたいっす。
やっぱお子ちゃまだな。

―― 納豆博物館


納豆の世界に包まれ、二人はいつの間にか手を繋いでいた。
他の人からは僕と由菜はどう映るのだろう。
恋人同士? 仲の良い兄妹? 先生と生徒?
まさか本気で彼女になるなんて思ってはいないよな。
由菜にとって僕は、ただの手段でしかすぎない。
僕は彼女の計画にまんまと引っかかっただけの存在。

「納豆ってやっぱ凄いね」

凄いっていうより、納豆の博物館って存在していたんだ。水戸じゃなかったけど
しかしながら納豆は奥の深い食べ物だと感心した。
ついでに仲良く納豆ストラップをゲットした。

「今夜はミートソースの納豆パスタで決まりね」
「マジで? 想像つかね〜」
「ネバネバが二人をラブラブにするんだよ」

そう言ってウィンクしながら由菜は腕を組んできた。
僕らはたくさんの納豆を買いこんで東京に戻った。
しばらくは納豆生活になりそうだ。

納豆食べて由菜とラブラブか……
はっ、今ヤッベェこと想像したぞオレ。てか、お胸が当たってるし……

「どうしたの?」
「えっ、なんでもないよ」
「ふ〜ん」

葛藤する喜之助、裏でほくそ笑む由菜。
由菜の思惑通りに計画が進んでいることを彼は知らない。


ロリポップ!

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