Nazca Novels 女子高生の計画的同棲

第15話 遠い約束

仲良し女子高生の二人はワケの分からない会話を楽しみながら歩いていた。
夜も遅くなったというのに声が大きいな〜
世間体というのを全く気にしないで生きているなこりゃ。
結局、酔えないまま部屋に戻ってきた。

「これでよしっと」

由菜はベッドの横に布団を敷いた。

「夜中にエッチな声を出さないでよ」
「何言ってるのよ祥子ったら」

修学旅行の夜状態になっている。
その脳天気さが少しだけ羨ましく思えた。

「とりあえず祥子と寝る〜」
「キャー由菜のエッチ〜」

キャーキャーとやかましい。
お願いですからとっととお休みになって下さい。

「私ね、明日ベッチとデートすることになったんだ」
「マジで? 良かったじゃん」

えーっと、ベッチって誰ですか?
ベッチ……別……岩尾別 ―→ ベッチ
頭が痛くなってきた。

「やっぱ年の差が恋を燃えあがらせるのよ」

やっぱ女子高生にはついていけない。
脱力とともに睡魔が襲ってきた。

「あれ? キイちゃん眠っちゃった」
「ねえねえ、由菜は将来とか考えたりするの?」
「もっと私を必要だって思ってくれたらね」
「そしたら結婚とかもアリってこと?」
「……だって、ずっと前から約束しているも」
「マジで? なんかドラマみたいじゃん」

仲良し二人は夜中まで話し込んだ。
東の空が少しだけ明るくなってきたときに会話が途絶えた。


◆◆◆


今から7,8年前 ――
高校生カップルと小学生の女の子の会話。

「5年生か、かわいいね」
「うわっ、キノってばロリコンじゃないの?」
「分かってないな〜この子の将来を見計らってオレは言ってるの」
「何よそれ」
「ゆーちゃんだっけ? オレが25になったら結婚しよう」
「バカじゃないの」

5年生の女の子は頬を赤くしながら下を向いた。

「はい」

そして、小さな声で返事をした。

「ゆーちゃんも、はいって返事しないの」

今年の6月 ――
二人の女子高生の会話。

「なんかさ〜すぐエッチなことをしようとするのよ」
「そうそう、雰囲気もあったもんじゃないよね」
「ガツガツしてさぁ、空気読めってゆーの」

どうやら同い年の男子はエッチなことしか考えていないと憤慨しているようだ。
大体このくらいの年頃の健全な男子は下半身で物事を考える方が多いのだよ。

「なーんか、運命的な出会いってないかなぁ〜」
「そうそうないよ、由菜」

まだ17年しか生きていない二人が、まるで生きることに疲れたようにガードレールに腰を降ろした。
東京の空は鈍い灰色の雲に覆われていた。

「お世話になっています」

二人の視線の先に何やら説明をしている男性の姿が映った。
お客さんと何かの話をしているようだ。

「道路境界付近と中庭では、中庭の方が測定値が低い結果になりました」
「道路際の方が音が大きいということですか?」
「そういうことになります。音楽の音量の影響より隣接する国道の車両通行音などの影響が高いと考えられます」
「問題はないと考えていいのですね」
「はい。この地点では音の影響は少ないです」

報告書を片手に熱心に説明する若いサラリーマンだった。
二人の目には、その人が大人の男性としてかっこよく見えた。

「仕事のできる男って感じだね」
「……」
「由菜、どうしたの?」

今時の女子高生とはどういう生き物なのか?
テレビのバラエティ番組などに出演している素人の女子高生は地上最強の生き物に見える。
言いたいことをハッキリ言い、根拠のない自信を漲らせ、司会者を愕然とさせる。
さらにこれが複数に増えると支離滅裂状態になり、別世界の領域に引っ張り込まれる。
これが番組として当たり前に放映されるのも、大人の人間のレベルが下がっている証拠だろう。
ただし、そんな子達は一部に限られたものであって、ほとんどの子は自分なりの目標を持っている……そう思いたい。

ところで、この由菜って女子高生はどうなんだろう?

「運命の人がいた」

運命の人を信じる女子高生……いいんじゃないかな。

「おーい由菜、自分の世界に入っちゃっているぞ」
「これから先は自分で切り開かなきゃ」
「言っている意味が分かんないです」
「ゴメン、急用ができちゃった」
「えーマジで?」


彼女は心に強い決意を抱いた。
そして、プチストーカーになり彼を尾行した。
住んでいる部屋を突きとめた。

「今日はこれでOKね。次は会社だね」

翌日は勤務先の情報を得た。

「次は私生活かな」

よく行く居酒屋によく行くスーパー。
よく買う発泡酒によく買う惣菜。
どうでもいいムダ情報まで収集した。

「一番重要なのはコレだよね」

最後にもっとも重要な情報……彼女がいるのかどうか?
しばらくの間、彼を泳がせた。(お前は刑事か!)

「よし、これでいける!」

彼は彼女と別れたという事実が判明した。
ついに彼女の心の中でGOサインが出された。
あとは強引に攻め込むだけである。
押しに弱そうという情報も得ている。(勝手にそう思っただけ)

作戦は決めている。

自分の女子高生という武器を最大限に利用しよう。
どんな男でも必ず引っかかるワザ。
これで100%勝てる。

彼女は作戦を決行した。
強い思いと強い自信を持って同じ電車に乗り込んだ。
あの日は妙に電車が空いていた。


◆◆◆


「あーはは、あーはは、私の勝ちね」
「くそーやられた!」
「もう私から永遠に逃れられないわ」

『ガバッ』

嫌な夢を見て目が覚めた。
だけど、どんな夢だったのか覚えていない。
ただ、激しく罠に引っかかったような夢だった気がする。
ふと横を見ると、由菜が隣で眠っていた。
気持ちよさそうな幸せそうな寝顔に見えた。

「絶対に思い出させてやるんだから」

コイツ、どんな夢を見ているのだ?

ロリポップ!

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