Nazca Novels 女子高生の計画的同棲

第14話 笑顔の裏側

「それって最高じゃないか」

岩尾別の口から意外な言葉が返ってきた。
意外というより、マジでそう思っているのか?
お前ってヤバくないか?

「コイツ、使える」

由菜がボソッと何かを言った。

「なんか言ったか?」
「なんも言ってないよぉ〜キイちゃん」

由菜は爽やかな作り笑顔で微笑んだ。
背中に妙な汗が出てきた。
イヤな予感がするような……

岩尾別は立っている由菜と祥子ちゃんを席に座るようにと促した。
由菜は僕の隣に、祥子ちゃんは岩尾別の隣に座った。

「飲み物と食べたいものを注文しなよ」

岩尾別は彼女らにそう言った。

「はい、ありがとうございます」

二人は合わせたように笑顔で言った。
オレンジジュースとポテトチーズ、野菜サラダなどを注文した。

「ヤナミー、彼女が女子高生ってことを恥ずかしいと思っているのか?」

岩尾別は真面目な表情で僕に言った。
隣に座っている祥子ちゃんが岩尾別の顔を真剣な眼差しで見ている。

「それは……」
「そんなことは恥じることではない。彼女に対して失礼だぞ」

僕は何も言い返すことができなかった。
そう、何も言い返せなかった。




違うんです。
彼女じゃないんです。
急に現れて勝手に住みついているんですよ。
困っているのですよ。
あたしゃ被害者なんですよ。

『ギン!』

うはっ、怖い。
隣で由菜が激しくも殺気だった視線を投げかけている。

「一緒に住んでいるのに、私が女子高生ってことを隠すんです」

由菜は今にも泣きそうな顔で岩尾別に訴えた。

「私、それが悲しくて……」

由菜、お前な〜よくもそうしゃーしゃーと言えるな。
彼女って設定になんの意味があるっていうのだ?
どうして彼女にこだわるのだ?
妹の方が何かと都合がいいと思うぞ。

「梁水さん、由菜がかわいそうだよ」

祥子ちゃんが悲しそうな表情で言った。
うわ〜コレ完全に悪者扱いだよ。
てか、なんでお前らこの店にいるんだよ。
せっかくの旨い酒が台無しだよ。

「ヤナミー、お前にとって彼女は大切な人じゃないのか?」
「……」

隣に由菜がいる状態で何も答えられなかった。

「年の差なんて関係ないぞ。お互いを認め合い、尊敬し合って初めて二人に愛という大事な絆が生まれるんだぞ」

そこから岩尾別の愛のお説教が始まった。
僕にとっては拷問にも近い苦痛な時間だった。

10分経過 ――

「大人にならなきゃいけないのはヤナミーの方だぞ」

事実を知らない岩尾別の長い愛の話が終わった。
それにしても岩尾別のヤツ、恥ずかしくもなく愛だと恋だと真顔で語れるよな。
今時の女子高生にこんな話をしてもドン引きされるだけだぞ。

「私…感動しました」

祥子ちゃんが瞳をウルウルさせて言った。
思いっきり乙女モード全開視線で岩尾別を見ている……
ドン引かないのかい!
感動しちゃったの? ウソやん!
まさか惚れちゃったりしないよね。

「もっともっと頑張ってキイちゃんに認められるように努力します」

コラコラ由菜。
何をどさくさに健気な女の子を演じているのだ。
そんなに無理に別キャラしていると体調崩すぞ。

「ヤナミー、いっぱい知っているんだろ?」
「いっぱいって?」
「彼女の良いところだよ」

由菜の良いところ? ねーよ!
ワガママだし、すぐにいじけるし、ツンデレでSだし。
ウンコしたら10分はトイレに行かせてくれないし。
遅く帰ったら凄く怒るし。


だけど……

由菜がいないときは落ち着かない。
由菜が笑ってくれると嬉しい。
そばに由菜がいてくれると安心する。
隣で眠る由菜がいると僕もよく眠れる。

「うん。いっぱいあるよ」

隣にいる由菜が僕の右腕に左腕を組んできた。
そして、恥ずかしそうな表情で見上げるように僕を見た。

ヤバイ。すげーかわいい。

「本日の作戦は大成功」
「ん?」
「なんでもないよ」

由菜はとびきりの笑顔で微笑んだ。

あれ?

一瞬、妙な寒気がした。
イヤな予感がするような……

ロリポップ!

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