第13話 梁水最高!
今週もあっという間に過ぎて、土曜日の朝を迎えた。
昼間で眠っていたかったけど、暑さに負けて目を覚ました。
何時だろう? うっ、まだ9時前じゃないか。
エアコンのスイッチを入れた。
冷たい風が流れてきた。気持ちいい。
せっかくの休みに早起きはもったいない。
二度寝でもしよう。
あ…キタキタ、もうちょいで堕ちる。
もう少しで眠りに入る。
この感覚が最高なんだよね。
「きゃははは」
最低なんすけど……
くしゃみを止められるより100倍腹立つ。
こんな朝っぱらからデカイ声で笑いやがって。
今時の高校生はデリカシーが無さ過ぎるってーの。
ん? 誰か来ているのか?
しょうがなく着替えてドアを開けた。
食卓テーブルに由菜と、もう一人の女の子が座っていた。
「おじゃましてまーす」
邪魔するなら帰れよ!
心の中で声を大にして叫んだ。
「お構いなく」
「起こしちゃったみたいでゴメンなさい」
小首をかしげながら謝られた。
かわいいけど、なんか卑怯な気がするぞ。
「私の親友で祥子ちゃんだよ」
「よろしく」
「よろしくお願いします」
休み中の宿題を土日で片付けるそうだ。
高校生って宿題とかあったかなぁ。
自分の高校生の頃を思い出そうとしたが、思い出せなかった。
『チーン』
トーストとアイスコーヒー。
朝食をとった。
由菜と祥子ちゃんはローテーブルに移動した。
「きいちゃん、祥子に彼氏紹介して」
「ブッ」
飲みかけのアイスコーヒーを吹き出した。
「いい人いませんか?」
「急に言われても……いやいや、年が離れすぎでしょ」
「由菜と付き合っているじゃないですか」
『ギン!』
うがっ。
由菜が鋭い眼光で僕を睨んでいる。
言葉を慎重に選ばないと大変なことになりそうだ。
「年上がいいの?」
「はい。10歳までなら全然OKです」
う〜ん、年上の男に憧れる年頃なのかなぁ。
由菜も高校を卒業したら、あっという間に20歳になる。
その頃には僕は27くらいだから、年は離れているけど悪くない。
むしろ年下のかわいい彼女って感じで優越感という特典が付く。
例えば、由菜と結婚したとする。
周りからは梁水は若い嫁さんをもらったなって言われる。
年下の彼女って良いことじゃないか。
うおっ、今僕は何を妄想していたんだ?
「私って面倒くさい女じゃないですから」
「そうなんだ」
自分で言うのもどうかと思うけど、そこはまだ子供だな。
いったい何を根拠でそう言い張れるのかね。
「あ…私、処女じゃないです」
「ぶはっ」
再びアイスコーヒーを吹き出した。
まぁ確かにそこは面倒くさい要点にはなる可能性があるよ。
やっぱり、まだまだ発想が若いな。
ところで由菜は面倒くさい方なのかなぁ〜
面倒くさいのは勘弁してほしいな。
万が一、エッチしちゃったらどうなるのかなぁ〜
待て待て待て。待つんだジョー。
とんでもないことを考えちゃダメだ。
だけど、そろそろご無沙汰なんですよ。
健康な男の子なんですから。はい。
「いい人いたらマジで紹介してくださいね」
「誰かいたら紹介するよ」
とはいっても、女子高生を紹介するっていうのはヤバくない?
ある意味、犯罪行為に手を染めていることになっているよな。
それ以前に梁水は変態だってレッテルを貼られてしまう可能性が大だよ。
『ピリリリリー』
同僚の岩尾別からの電話だった。
「今晩飲まない?」
「奢りか?」
「海で勝ったからご馳走するよ」
「行く」
◇◇
今日は祥子ちゃんがお泊まりすることになった。
なったというか、勝手にそう決められた。
どこで寝させればいいものか……
どっちにしても由菜が勝手に決めるからいいか。
「オレは飲みに行ってくるから」
「きいちゃんだけズルいな」
「大人の付き合いってやつだよ」
「ぶぅ〜」
由菜は別キャラ状態でいじけた表情をした。
なんかムカつくけど、かわいいな〜コンチクショー!
って、なんか変だぞオレ。
『ガチャ』
「ふふっ、チャンス到来かも」
「由菜どうしたの?」
「そろそろステップアップの頃かな」
「意味分かんないけど」
「私の存在をアピールする絶好の機会だわ」
「アピール?」
「ついでに祥子の彼氏もゲットよ」
「ねぇねぇ、勝負パンツにした方がいいかな」
やっぱ由菜は友達がいると猫をかぶる。
キャラが全く異なり別人に化ける。
はっきり言ってかわいい。
はっきり言って気味が悪い。
ホントはどっちのキャラなのだ?
そんなことを考えながら待ち合わせの居酒屋に行った。
居酒屋には既に同僚の岩尾別が来ていた。
「会社帰りにパチ屋に寄ったのか」
「昨日は絶好調だったぞ」
「元気あるな」
「そのお陰で飲めるんだぞ」
「感謝するよ」
彼には3つ下の彼女がいたはず。
そういえば最近は彼女の話は聞かないな。
「2ヶ月前に別れたよ」
「もったいないな」
「誰か紹介しろ」
「誰もおらんよ」
彼の愚痴にしばらく付き合わされた。
嫁にするには年下の人が理想という持論を熱く語った。
女は男より精神年齢が高いので、5歳は下の年齢が理想的なのだそうだ。
確かに男はいつまでもガキだよ。
理解できるところもあるけど、自分的には価値観と譲り合いの精神だと思うな。
価値観があまりにも違うと一緒には生活できない。
やっぱさ、お互いに譲り合い、思いやることが大事だよ。
そうしないと長続きしないよ。
ところで僕は、いつまで由菜との生活が続くのかなぁ。
「きいちゃ〜ん♪」
「ブ―――ッ」
「ヤナミー……オレに顔射はよせよ」
ビールを岩尾別の顔面に直噴した。
「わ、悪りい」
聞き覚えのある声とその呼ばれ方。
恐る恐る振り向いてみた。
由菜が最高の作り笑顔で微笑んでいた。
まずい。非常にまずい。
岩尾別に何と言って誤魔化すか。
女子高生と付き合っているなんて思われたら最悪だ。
「ヤナミーの彼女?」
「はい」
うっひょ〜! 思いっきり即答しちゃっていますってば。
きいちゃんはどうすればいいの?
きいちゃんじゃねぇって!
「いくつなの?」
「高3です」
「……」
参りました。もう降参です。
岩尾別のヤツに会社の連中にバラされて、変態の烙印を押されてサヨナラっす。
「ケーン」
うお―――っ。(4号機の方ね)
いいや、まだ諦めるなオレ。
こんなところで負けてたまるか!
なんとか口封じをしないと……
「ヤナミー、お前なぁ女子高生と付き合っていたのか」
「待て待て、落ち着いて聞いてくれ」
「女子高生って……お前なぁ〜」
ダメだ。言い訳が思いつかない。
万事休すです。はい。
「それって最高じゃないか」
「へっ?」
ええっ〜!?
そこ褒めてもらっていいの?
ワケ分かんねぇ〜
てか、なんで最高なの?
スッキリさっぱり分かんないぞ?
ひょっとして、今のオレって最高なの?
オレって最高?
イエーイ!
梁水最高かーい?
イエーイ!
今のオレは最高なんだぜ〜♪
完全に自分を見失っている梁水喜之助であった。
由菜の計画が着実に進んでいるとも知らずに。
ロリポップ!
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