Nazca Novels 冬花の夏〜小5の夏の恋心〜

+1話(第28話) あの時の笑顔のままで

「彼氏いないの?」
「久しぶりに会ったのにいきなり悲しいこと聞かないでよ」

咲希は4歳児のお母さん。
お腹の中には新しい命を宿している。

「冬花は奥手だからね〜って、もうリーチかかってるよ」
「う〜、由美はどうなの?子供は作らないの?」
「今3ヶ月になるよ」
「そうなの?おめでとう」

由美も赤ちゃんを授かった。

二人とも幸せそうで羨ましいな。

「ちょっと宮川君、あんた冬花を嫁に貰いなさいよ」
「咲希ったらいきなり何言ってるのよ」
「だって宮川君は冬花のこと好きだったもんね」
「よくいじめていたよね」
「恥ずかしいこと思い出させるなよ」

咲希と由美に突っ込まれて宮川君は恥ずかしそうな顔をした。

「オレ、年明けに結婚するんだ」
「おめでとう」
「ありがとう」

久しぶりのクラス会…みんな大人になっていた。

「織川君は来ないんだね」

私の初恋の人。

織川志典さん。

彼の姿は無かった。

「アイツの連絡先が誰も分からないんだって」
「残念だね〜冬花」
「そうだね」

あなたは今、どこにいるのですか?


◆◆◆


「ここが新しい真奈の部屋だよ」
「わー海が見える」
「気に入った?」
「うん、パパ大好き」
「幼稚園は楽しみ?」
「うん、お友達いっぱい作るんだ」

新しい街で真奈と二人で暮らしていく。
少しだけ懐かしい香りがするこの街。
僕は真奈を守っていく。
悲しい思いはもうさせたくないから。

「パパ、パパはお嫁さんほしくないの?」
「なんで?」
「真奈はパパに幸せになってほしいもん」
「そっか、パパは真奈になってほしいかな」
「それは無理だよ〜年の差が大きいもん」
「あはは、そうだね」

小学生の時、大好きだった女の子。
いつか大人になって迎えに行くって思っていた。
彼女の笑顔が大好きだったから。
だけど、それはもう遠い昔の話。
遠い思い出。

君の笑顔は今もあの時のままかい?

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