Nazca Novels 恋鍋〜鍋ちゃん子の恋

第3話 どうして?

―修学旅行―
いつの間に付き合ったの?ってカップルが多かった。
それに、微妙な関係(友達以上恋人未満)も多数いた。
私達の班は自由時間になるとバラバラになった。
みんなお相手がいるそうだ。

「どこ見て回る?」
「……なんでアンタとなのさ」
「寂しい者同士だからじゃないの?」
「寂しくないって!とっととどっか行ってよ」
「はぁ〜分かったよ、オレ行くね」

アイツはどこかに行った。
一人ポツンと残された。
アイツのことだから適当な連中を見つけて楽しくできるのだろう。

やっぱ一人ぼっちは寂しい。

私はブラブラと歩いた。
とりあえずは家族のお土産を買おう。
その後はどうしようかな?

「これカワイイよ」

周りからは楽しそうな声が聞こえてくる。
涙が出そうになった。

「冷たっ」

耳元が急速冷凍された。

「はいジュース」

振り返るとアイツがいた。

「どこ回ろうか?」
「だから、なんでアンタと……」
「いいから行くぞ、泉菜」
「えっ?」

小学から一緒だった。
付けられたあだ名は『ちゃん子』
アイツが嫌いだった。
大嫌いだったのに……
初めて名前で呼んでくれた。
私のことを泉菜って呼んでくれた。

うれしい。

あれ?涙が出てきた。

「ちょっ、どうした?」
「なんでもない」
「なんでもないって」
「いいから早くどっか連れて行ってよ」

アイツはくだらない冗談やバカなことをして私を笑わせた。
私はそれを素直に笑った。
笑ったことがうれしかった。
アイツの笑顔がうれしかった。
二人っきりがうれしかった。


◆◆◆


「せっかくのパーティなのに残念だね」
「ゴメンね美世」
「じゃあ切るね〜初詣は行こうね」
「うん」
「ちょっ、ちょっと待って」
「ん?」
「オレだ、お前ってタイミングの悪いヤツだな〜」
「うるさいわね、しょうがないでしょ」
「泉菜、早く直せよ」
「あ、ありがと」

自分の運のなさに失望した。
みんなは楽しそうにクリスマスを過ごしている。
私は水枕の冷たさと一人ぼっちの寂しさでクリスマスを過ごした。

修学旅行以来、みんなが前よりずっと仲良くなった。
私は少し明るくなったと思う。
友達にもそう言われる。
どうしてなのか分からない。
いや本当は分かっている。
アイツと二人っきりになってからだ。
アイツが笑わしてくれたからだ。
アイツが名前で呼んでくれたからだ。

クリスマス…私は何を期待していたのだろう。

結局、大晦日の朝まで寝込んでいた。

―31日―
「もし来れたら携帯に入れてね」
「うん」

寂しい年末を過ごした。
だけど、夕方になる頃にはすっかり調子も戻った。
美世に連絡してみようと思った。
でも、親に行くことを止められた。
悲しい年越しが確定した。

つまらない大晦日……パジャマのままベッドでゴロゴロしていた。
テレビも見る気がしなかった。
みんな集まっている頃かな?
アイツも来るのかな?

時計の針が進む。
あと1時間で今年も終わる。

『チャラチャラチャラ〜♪』

携帯から着メロが流れてきた。

「もしもし」
「直ってないのか?」

電話の声はアイツだった。

「直ったけど……」
「角のコンビニにいるから来いよ」
「急に言われても……」
「20分待ってやる」
「何よ、その命令口調は」
「それまで来なかったら帰るわ」

電話が切られた。

身勝手な男だ。
なんで私がアイツに命令されなきゃならない?
なんで私がアイツに振り回されなきゃならない?
図々しい男だ。

アイツは私に『ちゃん子』とあだ名を付けた。
私はコンプレックスと闘い、アイツを恨んだ。
アイツがいなければ楽しい高校生活を過ごせたはず。
ひょっとしたら、彼氏だってできてラブラブできたかもしれない。
だけど…全部アイツに壊された。
だから私はウソを言ってアイツの悪い噂を流した。
その成果もあって、今のところアイツは彼女がいない。
ざまー見ろって思った。

なのに……どうして私はこんなに急いで着替えているの?

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