Nazca Novels 吹雪の中で

第4話

このままではダメだ。
仕方がない、奥の手を使おう。
山側の墓地の横を抜ける裏道がある。
その道を行けばちょうどレストランの裏手の道に出られる。
昼間でも気味の悪い道だが、そうも言っていられない。
僕はハンドルを左に切った。
だんだんと民家が無くなっていった。
街灯の灯りも無くなってきた。
かろうじて道路脇の反射板が見える。
車のライトに振る積もる雪が反射する。
車のスピードは20キロも出ていない。
でも、渋滞よりはマシだ。
だんだん墓地が近づいてくる。
ハンドルを握る手が汗をかいている。
そして墓地の横を通り過ぎた。
「はぁー」っと僕は安堵のため息をついた。
しばらく行くと民家の灯りも見えてきた。
安心した。


「あっ」


僕は息をのんだ。
白っぽい何かが近づいてくる。
足が震えてきた。

何かの間違いだ。

僕は自分に言い聞かせた。
でも次の瞬間、その白っぽい何かは目の前にいた。
明らかに人の姿をしていた。
僕は急ブレーキを踏んで車を止めた。
早く逃げなきゃ。
後ろを振り返った。
でも、吹雪で後ろが見えない。
僕は視線を前に戻そうとした。
その瞬間、その白っぽい何かは僕の運転する窓にいた。

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