Nazca Novels 女子高生の計画的同棲

第3話 強制的同棲

自分が高校生だった頃はどうだったのだろう?
いやいや、ここまで酷くはなかったと思う。
女の子だってまともだったよ。

このままでは僕の生活が崩壊する。

「勝手に住むって言われても困るって」
「こっちも困る」

ムッとした顔で腕組みをした。
そして、僕を睨みつけた。
ちょっと待てって。
まるでこっちが悪いみたいじゃん。

「私が死んでもいいんだ」
「よくはないけど、ちょっと話が大げさになっていないか?」
「私にとっては大げさなことなの!」

話し合いは平行線をたどった。
なに一つ妥協案が見あたらない。
待て待て、僕が妥協してどうするんだよ。
追い出すしか道はないんだよ。

『ピンポーン』

誰だろう、新聞の勧誘か?

「私は着替えてくる」
「着替えて帰れ」
「死んでもイヤ」

せっかくの連休に、なんでガキを相手にしなくてはならないだ。
やっと静かな生活に馴染んできたところなのに。
下手したら犯罪者に祭り上げられるぞ。
あーっと、誰か来てたんだ。

『ガチャ』

目の前には女の人が立っていた。
きれいな年上の女性だった。

「梁水さんですか?」
「はい、そうですけど」
「娘がいつもお世話になっています」

娘? 誰のこと?
まさか……

「ママ久しぶり」
「元気してたの?」
「うん」

ウソですやん!
なんで母親まで来ちゃうの?
なんでこの場所が分かったの?
あーっ、二度寝しているときだ。
アイツちゃっかり地図情報をメールしたな。

「とりあえず上がってよ」
「おじゃまします」

あまりの展開に倒れそうになってきた。
てか、ここオレの部屋なんだけど。
勝手に入れちゃってるし。

「はじめまして、由菜の母です」
「はじめまして」

どうみても40前って年齢だ。
ずいぶんと若いお母さんだ。
僕的には全然許容範囲だ。

「本当にいいのですか?」
「いいとおっしゃいますと?」
「同棲されるということです」

キイちゃん、落ち着くんだ。
だぁー、なんで自分をキイちゃんって言っているんだ。
あの子とは昨日の夜に会ったばかりだぞ。
それなのにどうして話がこんなに進んでいるの?
そうだよ、これは絶対に夢だよ。
僕はイヤな夢を見ている真っ最中なんだよ。
がんばってよオレ、目を覚ますんだキイちゃん。
キイちゃんじゃねえって!

彼女は母親の後ろの方で手を合わせている。
僕に上手く話を合わせろとジェスチャーをしている。

冗談じゃない。

僕はそんなに善人ではない。
君に一日付き合ってあげたんだよ。
もう巻き込まないでくれ。

彼女は背中を向け、前にかがんだ。

『チラッ』

ぶっ。

アホか! このエロ高校生が。
そんな交渉に応じるわけがないだろう。

ムッとした顔で前を向いた。

『チラッ』

がっ。

真正面攻撃か。

悪いけど、ションベン臭いガキなんて興味ないよ。
こっちはもう大人なんだよ。

真っ赤な顔をして怒っている。
そしてモゾモゾしだした。
再び後ろを向き、さっきより前屈みになった。

『チラッ』

でふっ!

穿いてない……丸見えだった。

「安心して下さい」

オレ、バカです。エロです。
自分に情けなくて涙が出そうになってきた。
あれ?お母さんが涙ぐんでいる。

「娘はあなたのことを本気で慕っています」

このお母さんは、娘のことを愛しているんだな。
娘のウソを疑いもなく信じている。

母親は話し出した。

元々は東京に住んでいた。
旦那さんが経営する会社が倒産した。
仕方がなく、実家の家業を継ぐことになった。
娘を東京に残し、釧路に行った。

経済的な理由で、一人暮らしはさせてあげられない。
東京には親戚のお姉さんが一人暮らしをしている。
母親はお願いして一緒に住まわせてもらった。
しかし、お姉さんもお年頃だ。
いろいろと都合の悪いことが多くなってきた。

彼女は居場所がなくなってきた。

そんな時、彼女は年上の男の人と知り合った。
彼女は自分を子供扱いしない彼に恋をした。
彼も自分を一人の女性として受け入れてくれた。
そして二人は一緒に住むことになった。

母親はそう理解しているらしい。

「娘のことよろしくお願いします」
「はい」

母親は深々と頭を下げて帰って行った。

お母さん、娘さんは将来とんでもない詐欺師になるでしょう。
僕が太鼓判を押しますよ。

だけど、もう遅い。
安心して下さいって言ってしまった。
丸見えに負けてしまいました。

「キイちゃんありがとう」
「どうして話がこんなに進んでいる」
「……」
「答えろよ」
「怒らないでよバカ」

泣きそうな顔をしてうつむいた。
そして、へたり込むように床に座った。

「計画していたの」
「計画?」
「だって、そうしないとお姉ちゃんに迷惑かけるも」
「……」
「昨日から新しい彼氏も住むことになったの」
「それはキツイな」
「お姉ちゃんはいい人だけど、男を利用するところがあるから嫌い」
「お前も十分利用しているぞ」
「違うよ、キイちゃんは特別なんだもん」

彼女が言うには、もうお姉さんに迷惑はかけたくなく親にも心配させたくなかった。
とはいっても、一人暮らしをする財力はない。
そこで彼氏と同棲するという秘策に打って出た。
娘を溺愛する両親は娘を信じて了承した。
今日は母親がその彼氏に会いに来る日だった。
彼女は計画を実行するしかなかった。
僕は偶然にも彼女の目にとまり、利用されてしまった。
たぶん、そういうことなんだろう。

「会ったこともないオレが特別なわけがないだろう」
「何回か会ったこともあるし、話もしたことがあるも」
「ウソをつくな! お前には会ったことも喋ったこともない」
「酷い、覚えていないんだ」
「会ったこともないのに、覚えているワケがないだろう」

会ったことがあるって?話をしたこともあるって?
そんなデタラメなウソは幼稚園児でも言わないぞ。

「やっぱり出ていかないとダメなの?」
「……」
「キイちゃんが望むならエッチなことしてもいい! だから……」

そんなに必死な顔をするなよ。
それに、母親にもはいって言ってしまった。
ご丁寧にお願いされてしまったよ。

「もういいよ、ここにいていいよ」

彼女は僕に抱きついてきた。

「やっぱ私の思っていた通りの人だ」
「どういう意味だよ」
「優しくてエロおやぢなトコ」

そこは褒めてくれるんじゃないのかい!

「ありがとう」

そう言って彼女はさらに強く抱きついた。

悪夢のような現実……
出会ったばかりの女子高生。
僕と女子高校生の同棲生活が始まった。

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