Nazca Novels 女子高生の計画的同棲

第4話 不機嫌の理由

寝苦しい夜を過ごした。
エアコンは8月までは我慢だ。
今何時だろう?
時計を見るとまだ5時半だった。
昨日は疲れ果てて9時には眠ってしまった。
起きて散歩でもするか。
かえって外の方がまだ涼しいだろう。

うげっ。

薄いTシャツにピンクの下着姿……

無防備に熟睡している女の子がいる。
それは反則だぞ、スケスケの格好とその寝顔は。
ソファで寝るって言っておいて、いつの間にか隣で寝ている。

『少女を18歳未満と知りながら、いかがわしい行為を…』

……散歩してこよう。

『ガチャ』

外の空気は爽やかだった。
まだ気温は高くなっていない。
天気もいいし気持ちいい。
近くの川まで歩いてみた。

ジョギングをする人。
犬の散歩をする人。
朝野球をしている人達。
この街もそんなに悪くない。
僕はのんびり散歩を楽しみながら、コンビニに寄って部屋に戻った。

『ガチャ』

「うわっ」

ドアを開けると怒った顔の由菜が立っていた。

「こんなに早くどこに行ってたのよ」
「散歩だよ、さんぽ」
「ジジイだ」

コイツ、典型的な低血圧だな。
こんな爽やかな朝なのにメチャ機嫌が悪い。
しかも態度が偉そうだ。

「いなくなったかと思った」
「ここはオレの部屋だ」
「知っているってば」
「お前がいなくなるのは分かるけど、オレがいなくなるワケがないだろう」
「いなくなればいいって思ってるんだ」

由菜が泣きそうな顔になってきた。
まったく、朝っぱらから面倒くさいヤツだな。

「思ってないって」
「ホント?」
「ホントだ」
「出ていけって言わない?」
「言わない」
「絶対?」
「言わないって」
「一度でも言ったら、死ぬからね」
「約束するよ」

あ〜あ、こりゃ完璧に脅しだな。
こんなガキとこれから一緒に生活するのか。
近いうちにノイローゼになるな。

……トイレ行こう。

「どこ行くの?」
「便所だ」
「行ったらダメ!」
「なんでだよ」
「だって……」

由菜は僕から視線をずらして下を向いた。
あらら、なんか恥ずかしがっています?

「ウンコしたのか」

『ドカッ』

「うがっ」
「バカ! スカトロ変態魔!」

蹴り+あまりにも激しい変態扱い。
ウンコぐらい誰だってするじゃんよ。
面倒くせーな女子高生は。

―トイレに行けたのは10分後だった。

「朝食はトーストね」
「いいよ」

小さな食卓テーブル。
二人向き合ってトーストを食べた。
これからこんな朝が続くのか。
彼女ができても連れて来られないな。
コイツは何をやらかすか分からん。

でもさ、彼女ができたら出て行ってくれるよな。

「これから勉強するからあのテーブル借りるから」
「どうぞ」
「集中するから話しかけないでね」
「はいはい」

完全に上から目線で言っているな。
偉そうだと思ったら、泣きそうになるし。
女子高生は卑怯な人種だよ。

昼はインスタントラーメンを二人で食べた。
昼飯も食べたし、暇だから出かけるか。

「勉強するのか?」
「当たり前でしょ、受験生なんだから」

受験生ってことは、由菜は高校3年生なのか。
一応は進学するつもりなんだな。
高卒ってなかなか就職できないみたいだしな。
由菜は将来、何をしたいって考えているのかなぁ。
いや、大して考えていないのだろうな。
別にどうでもいいや。
さてと、どっか行ってこよう。
僕は着替えて出かけようとした。

「どこ行くのよ」
「別に」
「言いなさいよ」
「暇だからブラッとするだけだよ」
「……」
「晩までに戻るよ」

そう言って部屋を出た。

冗談じゃない。
二日でもうイヤになった。
こんな生活が続けられるはずがない。
アイツがノーパンでお尻を突き上げなかったら、こんなことにならなかったのに。

……オレのエロおやぢ。

行きたいところは別になかった。
ただ部屋に戻りたくなかった。
僕は晩までネットカフェで過ごした。
せっかくの連休に何をやっているのだろう。

『ガチャ』

部屋にはいるといい匂いがした。
由菜が晩ご飯を作っていた。

「おかえり」

一瞬だけうれしそうな顔をした?
いや、そんなはずはないか。

「スパゲティ作ったから」

ニンニクの香りが食欲をそそった。
ペペロンチーノだった。

「適当に作ったから美味しくないからね」

不機嫌そうに由菜は言った。
出て行かなくてもいいと分かってから態度デカイな。
ツンデレっていうやつか?
違うな、これじゃ言葉責め使いのサディストだよ。
そう思いながら一口食べた。

「美味いなコレ」
「美味しい?」

あっ、メッチャうれしそうな顔した。

「褒めたって何も出ないからね」
「……」

かわいくねぇな〜おい。
でもいいや、3日もすれば慣れるだろう。

「キイちゃん、これ」

由菜は僕に茶封筒を手渡した。
中身を出してみると、1万円札が入っていた。
10万くらい入っている。

「少ないけど、部屋代と食費に使って」
「これは貯金に回せよ」
「一緒に住むんだから受け取りなさい」
「……分かった」
「毎月払うから」

そう言ってテーブルの上を片付け、食器を洗いだした。

・・・・・・⇒

今日の由菜は朝から機嫌が悪い。
昨日はまだ笑ってくれたりして、かわいいところがあった。
今日の姿がアイツの本当のキャラなんだな。
金も払ったから文句は言わせねえぞって感じだ。
これじゃパソコンでエロ動画も見られないでないか。

「勉強終わったから寝る」
「お疲れ」

由菜はパジャマに着替えて、ソファに横になった。

「そこでいいのか?」
「いいの」
「おやすみ」

僕はベッドに入った。
今夜も寝苦しい夜になりそうだ。
僕はパンツとTシャツになって寝た。

『ピカッ』

一瞬、外が明るくなった。
しばらくしてからゴロゴロと音が鳴った。
どこかで雷が落ちたのか。

『スタスタスタ』

足音が近づいてきた。

『ゴソゴソ』

「ソファで寝るのでないのか」
「うるさい」

また外が明るくなった。
由菜の体がビクッとなった。

「お子ちゃまだな」
「……バカ」
「今日はどうしてそんなに機嫌が悪いんだ」
「……」

何も答えてはくれなかった。
黙って僕に背中を向けていた。

『ザー』

窓の向こうから雨音が聞こえてきた。
そして、今度はかなり近くで雷が鳴った。
部屋の中に響いてきた。

「ううっ」

由菜は僕の左腕に抱きついてきた。
そして、小さく震えていた。

「目が覚めたら独りぼっちだった」

機嫌の悪い理由を教えてくれた。

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