Nazca Novels 女子高生の計画的同棲

第5話 二人でお買い物

「この写真……なんでまだ大事に持っているのよ」

『グシャグシャ』

「バカ」


洗濯機の音で目が覚めた。
ベッドから出て外を見てみた。
空はきれいに晴れわたっていた。

もう10時過ぎなんだ。

「おはよう」
「もう少しで終わるから」

素っ気なく言われた。
全然いいけどね。
ブラウンのTシャツにデニムのホットパンツ。
かわいいお尻しちゃってからに。

「なに?」

うわっ怖っ。
女の子ってこう気配に敏感だよな。

「これから昼ご飯作るから」

手際よく料理を始めた。
部屋にいい匂いがしてきた。
何を作ってくれるのかな。

「適当だけど食べて」

生姜焼きとサラダだった。

「美味いな」
「ホント?」
「うん」
「褒めても何も出ないから」

相変わらず素っ気ない。
作ってくれるだけでも、ありがたいとするか。

「今日もどっか行くの?」
「行かないよ」
「そう」
「由菜は?」
「私は勉強する」

そういえば、由菜の洗濯物が乾いたらどうするかな。
あのバッグにしまうのは変だよな。
バッグはデカいけど、中身はそんなにないな。
普通女の子だったら服とかいっぱい持っているはずだけど……
それに、お姉さんの所にあるのは冬の制服くらいって言ってたよな。

「由菜、あのタンス使っていいから」

僕は寝室にあるタンスを指さした。

「いいの?」
「あれは使っていないからいいよ」
「……ありがと」

良かった。うれしそうな顔をしてくれた。
由菜はデカいバックの中からタンスにしまった。

「その他はお姉さんの所か?」
「向こうには冬の制服くらいしかないよ」
「普段着は?」
「これが全部だけど文句ある?」

……なんで怒った顔するかなぁ〜

「そんなの買う余裕はないし、お姉ちゃんから借りたりできたの」

そう言いながら食器を片付け始めた。
そうだよな、いろいろ大変なんだよな。
生意気なヤツだけど辛抱しながら頑張っているんだ。
由菜は洗い物をした後、掃除機をかけ始めた。

「なんか手伝う?」
「いい、邪魔」
「……」

やっぱどっか行けばよかったかな。
何もすることがない。
今までは洗い物や掃除に洗濯を当たり前に自分でやってきた。
由菜は頼んだわけでもないのに全部やってくれる。
それに料理もかなり美味しい。
なんか偉いなコイツ。

「なにこっち見てんの」
「ごめんなさい」

ちょっと褒めたらコレだよ。
なんなんでしょ。

「勉強するから」

今日は食卓テーブルで勉強を始めた。
静かな時間が過ぎていった。
僕は暇さに負けてベッドで眠ってしまった。

そして、部屋の中の蒸し暑さで目が覚めた。
いつの間にか隣で由菜が眠っていた。
苦しそうな寝顔をしていた。

「暑いよ」

開口一発目に暑さを訴えてきた。
限界だな、エアコン付けるか。

『ピッ』

涼しい風が流れてきた。
気持ちいい。

「あ、涼しい」

半分眠った顔で由菜が言った。
その表情が色っぽかった。

『少女を18歳未満と知りながら、いかがわしい行為を…』

いかん、変なことを考えるなオレ。

「由菜、買い物に行くぞ」
「暑いからイヤ」
「分かったよ、オレはたぶん遅くなるから」
「……」
「一応、カギ置いていくから」

僕は着替えて出かける用意をした。
由菜にもらったお金は別の口座に入れておこう。
このお金は由菜の必要なことに使いたい。

『ガチャ』

部屋を出た途端、蒸し暑い空気に包まれた。
もう夕方になるのに、この暑さは酷いな。
階段を下りて道路に出た。

「待ってよバカ!」

上からバカ呼ばわりされた。
由菜が慌てるように階段を下りてきた。

「行くの?」
「気が変わった」
「……」
「文句あるの?」
「ないですよ」

結局、二人で出かけることになった。
よし、せっかくだから渋谷にでも行ってみるか。


◇◇

京成本線、舎人ライナーをくぐり山手線に辿り着いた。
この辺は相変わらずゴチャゴチャしているな。
だけど、最近はこのゴチャゴチャ感が好きになってきた。

『ガタンガタン』

電車がゆっくりと走り出した。
学校のグランドが見える。
田端を過ぎると大きく左にカーブしていく。
駒込、巣鴨を抜けて池袋に……

「学校行くときは、ここで乗り換えるんだ」
「メトロに?」
「うん」

ん〜どこの高校に行っているのだ?
ちょっと聞いてみるか。
別にどこだっていいじゃんって言われるだろうけど。

「別にどこだっていいじゃん」

言われた。

電車は走り出し、新宿、原宿、そして渋谷に着いた。
そういえば久しぶりに渋谷に来たな。

「降りるよ」
「渋谷行くの?」
「うん」

ここの交差点はいつも人だらけだ。

「どこ行くの?」
「とりあえずはATMに金を入れてくる」

由菜のお金をATMに預け入れた。
そして、再び交差点前に戻ってきた。
女の子ってやっぱ109なのかなぁ。
なんか抵抗があるんだよココって。

「マルキュー行くの?」
「ああ、プレゼント買うんだ」

由菜のヤツ、少しは喜んでくれるかな。
飼い慣らすためには出費も必要だよ。

「……行かない」

えっ? 行かないだと?
いきなり出鼻を挫くんでないって。

「彼女もうできたんだ」
「はっ? そんなのいないぞ」
「だって今、プレゼント買うって言ったじゃん」

最初の言い方が悪かったか。
それにしても怒りすぎだろコイツ。
だんだんイライラしてきた。

30過ぎてないけど、喜之助イライラする。

「いいから付き合え」
「ちょっと、痛いってバカ」

強引に手を引いて歩き出した。
隣で由菜はブーブー文句を言っていた。
僕はオール無視を貫いた。

「ちなみに由菜だったらどの店で買い物したい?」
「……ここかな」
「そこに行ってみよう」

2階のフロアに向かった。

「あーこれかわいい」

7階のフロアに向かった。

「いいなーこれ」

6階のフロアに向かった。

「これもかわいい」

生意気な顔がかわいい顔になっていた。
やっぱ普通の女の子だ。
でも、見ている時間が長いなぁ。
疲れてきたんですけど。

「欲しいのあった?」
「いっぱいあった」
「買ってあげる」
「ホント?」
「うん」
「ホントにホント?」
「ホントだよ」

うわっ、スゲーかわいい顔してる。
いっつもこんな表情をしてくれればいいのに。

2階でミニスカと靴を6階でサロペ、7階でショーパンとワンピを購入した。

「アリガト、こんなに買ってもらって」
「他に欲しいのはない?」
「もういいよ」
「靴下とか下着とか間に合っているのか?」
「……」
「オレがパンツ選んでやる」
「ド変態!」

……変態に【ド】を付け加えられた。

「やっぱ欲しい」

5階に向かった。

「決まったら呼んで」
「選んでくれるんでしょ」
「イヤだよ恥ずかしいって、コラおい」

強引に腕を引っ張られた。
ある意味パラダイスな店内に入り込んだ。

「かわいい」

目を輝かせながら物色している。
やっぱかわいい系に目がいくんだな。
まだまだ子供だな。

「これとこれとこれって言ったら怒る?」
「いいけど、ちゃんと計ってもらえよ」
「大丈夫だって」
「成長していないのか?」

『ゴン』

「あたっ」
「うるさいよ、スケベじじい!」
「サイズ、計ってみましょうね」
「はっ、はい」

由菜は店員さんと試着室に入った。
中で何やら話をしている。
しばらくして出てきた。
ん? なんかうれしそうな顔をしているな。

「Cになってた」
「?」
「なんでもない」

……そっか、そういうことか。

テレレレッテレ〜由菜はレベルが上がった。

せっかくレベルが上がったなら、大人っぽいのも買えばいいのに。
これなんていいぞ、この紐パンでちょい透の。

「そんなのが好きなんだ」

うっ、ドン引きしながら言われた。
大人の女はこんなのを身にまとうのだよ。

「由菜にはまだ早いな」
「腹立つ」
「あれとそれなんてオレ的には大好きだよ」
「すいません、あれとそれも下さい」
「はい、ありがとうございます」

何をムキになっておられるのだ。
オレの趣味に合わせてどうするのよ。
ひょっとして、見せてくれるのか?

『少女を18歳未満と知りながら、いかがわしい行為を…』

……アホですな〜オレって。

「合計で2万3250円になります」

うごごごっ。
そんなに高価格アイテムだったのか…

「ボーナス一括でお願いします」

一番高く付いたのは下着だった。
女の子はお金がかかるなぁ。

「やさしいお兄さんですね」

店員さんが微笑みながら言った。
でも、妹もこれで喜んでくれただろう。

「彼氏です!」

こんな所で何を言うのだよ。
軽く頭痛がしてきた。

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