Nazca Novels 女子高生の計画的同棲

第6話 大人の考え方

店員さんの一言で再び不機嫌になってしまった。
普通に見たら兄妹にしか見えないって。
てか、別にどうでもいい話だろ。

「バカだあの女、全然似てないじゃん」
「そんなことで腹を立てるなって」
「うるさい! 重いからこれ全部持って」

完全に召し使い状態になった。
そういえば腹減ってきたぞ。

「どっかで晩飯食べるか」
「こんなに買ってもらったからいい」
「遠慮するなよ」
「戻ってから晩ご飯作る」

しょうがない、我慢するか。
再び山手線に乗って家路についた。

「少し待ってて」
「うん」

『ピリリリリ〜』

僕の携帯が鳴った。
誰だろう?
携帯を見ると、大学時代の友達の名前だった。

「梁水君元気?」
「久しぶり」
「新作作ったから持っていくね」
「どこにいるの?」
「玄関の前だよ」

『ガチャ』

ドアを開けると瑞穂が立っていた。
彼女はパティシエをしている。
たまに新作のケーキを持ってきてくれる。

「感想聞かせてね」
「かえって悪いな」
「ねえねえ、新しい彼女作らないの?」
「そう簡単にできるかよ」
「じゃあ、今度紹介してあげるね」
「期待しないで待ってるよ」
「またね」

そう言って彼女は帰っていった。
相変わらず忙しそうだな。
由菜と一緒に食べよう。

「今の女は誰?」

いつの間にか後ろに由菜が立っていた。

「友達だよ、大学の時のね」
「……ご飯できた」

やっと晩飯にありつける。
今晩は何かな?

食卓テーブルの上にはお茶漬けがあった。
やけに早いと思ってはいた。
いっぱい買ってあげたのにサービス悪いなぁ。

「文句ある?」
「ないです」

しーんとした空気の中でお茶漬けをすすった。

「彼女紹介してもらうんだ」
「あんなの話だけだって」
「やめた方がいい、どうせすぐにフラれるから」
「イヤな言い方するな」

カチンときた。

「シャワー浴びる」
「……」

なんなんだよ! あのクソガキは。
一年中機嫌が悪いのかアイツは。
あれじゃ友達いないな。
買ってあげて完璧に損したよ。
由菜には何をしても無駄だ。

『シャー』

シャワーを浴びてサッパリした。
だけど、心のイライラは流せなかった。
僕は口も聞かずにベッドに入った。

こんな生活は無理だ。

流しから食器を洗う音が聞こえた。
音が止まった後、今度はシャワーの音が聞こえてきた。

由菜は何を考えているのだろう?
これからも毎日つまらない顔で過ごすのだろうか。
待てよ、ひょっとして原因は僕にあるのか?
いやいや、そんなワケないよ。
僕は彼女の気に障ることは何もしていないもの。

せめて楽しく過ごしたい。

大人の僕が真剣に考えないといけないな。
まだまだ彼女は子供なんだから。
もっと年頃の女の子を考えてあげないと……
なんかオレって父親みたいじゃん。

リビングの電気が消えた。

暗くなったらホッとした。
急に眠気が襲ってきた。

『ゴソゴソ』

由菜がベッドに入り込んできた。

「寝たの?」
「……うん」

由菜の声は、ほとんど耳には届かずに眠ってしまった。

「バカ」


◇◇


ん、朝か。
今日からまた仕事の毎日になるな。
由菜も学校に行かなきゃいけないんだ。

かわいい顔してるのに……

憎たらしいヤツだけど、起こしてやるか。
僕はタオルケットを取った。

おがっ。

そっ…それは……
それは昨日オレが選んだ紐パンツ。
上下で5600円もした大人の下着。
なんかスケスケでエロいぞこれは。
よく見たら躰も大人じゃないか。

脱がしたくなりそう……

『少女を18歳未満と知りながら、いかがわしい行為を…』

またこのフレーズかい!

「ん…んっ」

あ、目を覚ました。

「6時過ぎたよ」
「分かった」

寝ぼけ顔かわいいな。

「あっ」

ん? どうした。

『ガフッ』

枕を顔面にぶつけられた。
おまけにケットを被せられた。

「見ないでよ変態!」
「なんでこうなるの」
「うるさいバカ」
「そんな格好でベッドに来るなよ」
「……」

あれ? 急に静かになったぞ。
向こうに行ったのか?

「もう取っていいよ」

言われたとおり、ケットを取った。

「……似合うかな」

下着姿のまま由菜は立っていた。

「一周してみてよ」
「エロ」

そう言いながらクルリと回って見せた。

由菜は今、何を求めているのだろう。
彼女のことをもっと考えてあげないといけない。
今はどうしてあげればいいのかを。

「凄く似合っているよ」

由菜は恥ずかしながらも、うれしそうだった。
僕はその表情が愛おしく感じた。


・・・・・・⇒

「オレ、行くから」
「うん」
「これ渡しておく」

合鍵を渡した。

「いいの?」
「それは由菜のだ」

コイツ、うれしそうな顔した。
うんうん、それでよろしい。

「うれしい?」
「調子に乗るなバカ」
「はいはい、行ってきます」

『ガチャ』

一週間働くか。
階段を下りて駅に向かった。

「待ってよバカ」

今日も上からバカ呼ばわりされた。
由菜が走って下りてきた。

ミニスカにニーソックス。

それって制服にありなのか?
ポロシャツはいいけど……

「ジロジロ見ないでよ」
「それで制服なの?」
「普段はこれでいいの!」
「今はあの下着を着けているの?」

あ、なんかかわいく女の子してる。

「恥ずかしいこと聞かないでよバカ」

『バシッ』

「痛てっ」

思いきり背中を叩かれた。

「……着けてるよ」

赤い顔で言った。

「盗撮されないように気をつけて」
「なに言ってんのよ変態」

山手線に乗り込み、僕は会社へ由菜は学校へ向かった。
池袋で由菜は降りた。

「寄り道しないでよ」

まるで僕が学生みたいな言われ方だ。
今日はまっすぐ帰ろう。

由菜はちゃんと学校に行ったのだろうか。
サボっていないだろうな。
どうみても真面目な生徒には見えないからな。

なんか心配だなぁ。

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