Nazca Novels 女子高生の計画的同棲

第8話 ナカミハコドモ・カラダハオトナ

朝は目が覚めると隣に由菜がいた。
だけど、今朝は隣に由菜がいなかった。

由菜のいない朝。

朝食はトーストを食べた。
今日は何をして過ごそうかな。
部屋中を見回してみた。
洗濯も掃除もする必要はないみたいだ。
何もすることがないな。
スーパーに食材でも買いに行ってくるか。
トボトボと近所のスーパーに出かけた。

最近は野菜が高いな〜
冷やしトマトが食べたかったので、トマトをカゴに入れた。
今日は久しぶりに自分で晩飯を作るか。
今晩はパエリアに挑戦してみよう。
オリーブオイルが必要だな。
シーフードミックスでいいよな。
もも肉も入れようかな。
いろいろ買いこんで部屋に戻った。

今度は何をしよう。
暇ですることがない。
部屋にいるとムダにエアコン代がかかるな。
近所の中古本屋に出かけた。
立ち読みに疲れたので、近くの喫茶店でアイスコーヒーを飲んで休んだ。
お代わりをして1時間くらい粘った。
部屋に戻ったときには、日が傾いていた。
よし、晩飯作りの作業に取りかかるか。

パエリアが食べたかったけど、作ったことはなかった。
とりあえずネットでレシピをプリントアウトしよう。

えーと、まず必要なのは……
げっ、ニンニク買うの忘れた。
ニンニクは必要だよな〜
いきなり出鼻を挫かれた。

「何作ってるの?」
「うわっ、由菜」

後ろに由菜が立っていた。
もう帰ってきたのか。

「パエリアを作ろうかなって」
「作れるの?」
「作り方をプリントアウトした」
「材料を買い忘れたんだ」
「その通りです」
「ダメじゃん」

いきなりダメ出しされた。
けっこう凹んだ。
作る気が失せてしまった。

「これじゃいつ出来上がるか分かんないじゃん」
「……」
「私が作るからどけて」

仕事を取られてしまった。
だけど、不思議とうれしい気がする。

「なんで作る前から汚れているのよ」

ブリブリ怒りながら料理を始めた。

「なんか手伝う?」
「いい、邪魔」

案の定、速攻で邪魔にされた。
そういえば、買った服を着ていないな。
せっかく買ったんだから、着ていけばよかったのに。
そう思いながらテレビのスイッチをつけた。
少ししてニンニクの香りがしてきた。
チューブのニンニクを使ったのか。
なるほど、頭いいな。
しばらく経って由菜がテーブルにパエリアを持ってきた。

「できたよ」
「美味そうだな」

早速食べてみた。
おっ、メッチャ美味い。

「美味しい?」
「すげー美味しい」
「パエリアって初めて作ったよ」
「由菜って天才かも」
「これぐらいで天才だったら世の中天才だらけじゃん」

素直に喜んではいただけなかった。
美味しいパエリアを食べられたからいいか。

「昨日は楽しかった?」
「うん、カラオケに行った」
「そっか」
「今日も泊まればって誘われた」
「泊まってこればよかったじゃん」
「いない方がいいんだ」
「違うって」

思いきり睨まれてしまった。
由菜ちゃん怖い。
言葉に気をつけないといかんな。

「じゃあ泊まってくる」
「マジで?」
「いない方がいいんでしょ」
「そうは言ってないって」
「いいよバカ」

あ〜あ、付き合いきれないなぁ。
なんですぐにキレるのかね〜最近の若い子は。
デリカシーが無さ過ぎるのかなぁオレって。
やっぱ一人の方が断然いいな。

「気をつけて行けよ」

どうでもよくなって適当な言葉をかけた。
由菜は何も言わずに出ていった。

今日はベッドの真ん中で寝てやる。

シャワーを浴びてサッパリしてみた。
スーパーで買ってきた塩豆をつまみにビールを飲んだ。

女子高生を理解しようとするのがダメなんだよ。
僕は彼女を住まわせてやっているんだ。
それだけで十分彼女を助けているじゃないか。
干渉するのも可哀相だし、干渉されるのもイヤだ。
これからは無理にコミュニケーションをとらないことにしよう。
その方が彼女にとっても都合がいいだろう。
空気のような関係がいいんだよ。

アイツ…何も持たないで出ていったな。

まさかそれはないよな。
今頃は友達の家で悪口でも言っているのだろう。

『ガチャ』

ドアを全開に開けてみた。

小さくうずくまっている女の子がいた。

「友達の家に行ったんじゃないのか」
「うるさいバカ」

泣きながら言われた。
別に泣かすようなことをしたつもりはない。
したつもりはないんだけどな。

「部屋に戻ろうよ」
「イヤだ」
「子供みたいなことを言うなよ」
「子供だもん」

女子高生は臨機応変に大人や子供にキャラチェンする。

「部屋に入ろ」
「ここで寝る」

しばらくの間、膠着状態が続いた。
いくらなんでも風邪ひくぞ。
仕方がない、これでダメなら無理矢理連れ戻すか。

「昨夜は由菜が隣にいなかったから眠れなかった」
「……」
「オレは戻るよ」
「おんぶ」
「?」
「歩けないからおんぶして」
「はいはい」

僕は由菜をおんぶして3m先の部屋に戻った。

「顔洗って寝るよ」
「うん」

僕はベッドに入った。
少ししてから由菜がベッドに潜り込んできた。
今日はすぐに入ってきた。

「かわいそうだから一緒に寝てあげる」
「いっつも一緒じゃん」
「うるさいバカ」

かわいいけど、生意気なんだよな〜ホント。
コイツの心の中は年齢よりもずっと子供なんだな。
変な男に騙されるなよ。

「寒い」

そう言って背中にくっついてきた。
甘い香りがしてきた。

……体だけは大人なんだよな。

『少女を18歳未満と知りながら、いかがわしい行為を…』

だからそれはもういいって!

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