Nazca Novels 雪原に舞い散る赤い雪

第16話 決行は土曜日

「付き合ってくれてアリガトね、純夏」
「ううん、私も気が晴れたもん」
「女ってイヤよね〜陰険で」
「いいの、もう部活は辞めちゃったから関係ないよ」
「そっか、あ〜もう暗くなってきたね」
「うん、帰ろ」

うちのバド部は一人の先輩が援交しているって噂が広まった。
その先輩はショックで自殺をしようとした。
結局は未遂で終わったけど、その噂を流した人は同じ部活の先輩だった。
自殺しようとした先輩は最近彼氏ができた。
その彼氏の元カノが、噂を流した先輩だった。
まだその人を好きだったらしい。
とても優しい先輩で、そんな人には見えなかったのに…
私は何だか嫌になって部活を辞めた。

「ちょっと純夏、赤信号だよ」
「きゃっ」

『キーッ』

車は急ブレーキで私の前で止まった。
私はすいませんって頭を下げて謝った。
あれ?助手席に乗っている女の人……見たことある。
あの人は、先輩の彼女だ。

「危ないわね〜純夏ったら」
「……」
「どうしたの?」
「ううん、何でもないよ」


◇◇


遠山と地下鉄ホームのベンチで、しばらく話していた。

「今週仕掛けるからね」
「大丈夫なのか?」
「あれーホントは別れたくないとか」
「いや、早くサッパリしたい」
「任せて、こっちには強力な助っ人が二人いるから大丈夫」
「誰だよそれ」
「綾だよ、知ってるでしょ」
「綾って、あの天才女か」
「ピンポーン」

道曽根綾音……同じ中学にいた天才少女。
学力は常にトップで高校の試験も満点で合格したと聞いた。
おまけに文句なしの美貌とスタイルを誇っていた。

「もう一人は?」
「綾のお兄さんだよ」
「何で兄さんも出張ってくるのだ?」
「あの天才兄妹がいれば最強だよ」
「情報源ってその二人か?」
「そういうこと」

遠山と真弥では万が一、志緒理にバレたら計画は頓挫する。
そこで二人はあの兄妹に強力を頼んだ。
天才兄妹はノリノリで楽しみながら調査していた。
まったく、いい性格した兄妹だ。
兎にも角にも、みんなの強力を無駄にはできない。
何もしていない僕ができることは、志緒理と今は仲のいいフリをするだけ。
僕は積極的に志緒理と恋人同士していた。
休み時間にこっそりとキスもした。
志緒理は何度も唇を求めてきた。
僕は志緒理のスカートの中に手を入れ、そして更に奥へ手を入れた。

「英太……」

トロンとした目をした志緒理。
できるだけ僕はじらした。

「我慢できなくなっちゃう」

志緒理は補習がしばらく続く。
補習で帰れないのは好都合だった。
そろそろ色々な面でストレスも溜まっているはず。
土曜日…志緒理は必ず出没する。
僕は無理を言ってバイトの休みをもらった。

そして、土曜日の夜になった。


「マンション近くなんだ」
「女の子は他にいるの?私一人だったらちょと怖いな」
「大丈夫、他にも3人くらい女の子もいるから」
「あそこに座っている子達?」
「そう、ミミちゃん、祐子ちゃん、志緒理ちゃん」
「じゃあ行っちゃおうかな」

う〜ん、媚薬って感じで麻薬は使っていないみたいね。
まだまだお子ちゃまってところかしら。
どうせならもっと派手なところを押さえたかったわ。
まっ、それはしょうがないとして、志緒理って子もちゃんといるわね。
近くのマンション……多恵子の情報通りね。
あとは計画通りに事を運べばOKね。

「このマンションの最上階だよ」
「みんなは?」
「もう中にいるよ」
「どうせならもっと気持ちいいことしない?」
「もっとって?」
「使ったのバレたら逮捕されちゃうやつだよ」
「そんなの持っているの?」
「けっこう普通じゃん」
「……マジで?」
「アレレレ?怖いの?」

何だかショボいな〜コイツら。
こんなヤツらに騙されているのってガサいな〜
ちょっと気持ちいいこと覚えたからって、サルみたいなもんだよ。
金崎君もこんなサル子ちゃんとは別れないとダメだわ。
生きている時間の無駄遣いだよ。

「私の家って近くだから持ってくるね」
「えっ?あ、うん」
「ロック番号教えてよ」

チョロいチョロい。
よぉ〜し、作戦開始♪楽しみ〜


◇◇


「こっちは準備万端だ」
「先に金崎君と入るから、その後に空メールしたら踏み込んできて」
「分かった、もしメールが入らなかったら10分で踏み込むぞ」
「うん、じゃあヨロシク」


『ピリリリ〜ピリリリ〜』

僕の携帯が鳴った。

「もしもし」
「金崎君、準備はいい?」
「OKだけど、中には入れるのか?」
「バッチリだって」

よし、僕は覚悟を決めた。
志緒理、今夜僕は君にサヨナラをするよ。

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