第21話 夏休みの予定
人は死ぬまで勉強しながら生きていく動物だそうだ。
多くの人は麻薬やギャンブルを覚えると依存症になる。
言葉は悪いけど、勉強だって依存症になればいい。
勉強しないと落ち着かない。
分からないことが分かれば気持ちいい。
ある意味、自分をそのように洗脳する。
そうすれば勉強も楽しくなる。
そう笑いながら先生は言った。
「これでも飲んで頑張ろうね」
「ありがとうございます」
今はとにかく、卒業できるように頑張らなくちゃ。
先生も私のために親身になってくれているもの。
テストでいい点数を取って先生を喜ばしてあげたい。
英太のことはキレイに忘れるよ。
それに、英太は何も言わないでいてくれたし。
だからいいの。
むしろ感謝しているもの。
「今日は先生に晩ご飯を作ってあげますね」
「それはダメよ」
「だって……」
「泊まろうと考えているだろ」
「先生はいじわるです」
◇◇
昨日でやっとテストが終わった。
バイトも休んで頑張ったよ。
今回はけっこう自信があるのだよ。
遠山にいろいろ教えてもらったからね。
それにしても、アイツはいいよな~頭が良くて。
頭のデキが根本的に僕とは違うよ。
「英太」
真弥が僕に声を掛けてきた。
コイツは大丈夫だったのだろうか。
一緒にテスト勉強しようって誘ったら、断りやがったもんな。
「元カノ、凄いぞ」
「は?」
真弥に連れられて1階のロビー横にある掲示板に行った。
他の学校はどうか知らないけど、うちの学校は学年別に成績上位30番までが掲示板に張り出される。
「マジで?」
29番目に志緒理の名前があった。
がーん!
アイツってそんなに頭が良かったのか。
正直言って、かなりショックだった。
「見ても無駄なのに、なんで二人はここにいるの?」
遠山が僕の後ろから抱きついてきた。
背中に当たるこの感触は……
『ゴン』
「エッチなこと考えたでしょ」
「考えるほどのものは感じなかったぞ」
「ほ~私を敵に回すんだ」
「すいません、言い過ぎました」
遠山は3番目に名前があった。
アイツはほとんどマンガを読んでいたじゃないか。
なんでこんな所に名前が載っているのだよ。
「こんなもんかな」
「イヤミか」
「どうせ授業中に寝ているんでしょ」
何も言い返すことはできなかった。
いいよ、赤点取らなきゃいいんだよ。
「あの子ってけっこうできるんだ」
志緒理の成績に、遠山も少し驚いていた。
そして、少し寂しそうな顔をした。
それはたぶん、僕が考えていることと同じだろう。
あんなバカな遊びなんかしちゃダメだよ。
くだらないことでイヤな思い出を作ってほしくない。
当たり前の高校生活でも十分な思い出は残ると思うから。
仲間とワイワイするだけの毎日でも、いつかはいい思い出になるから。
・・・・・・⇒
「今日からバイト再開?」
「店長が休みなしで金稼げって」
「もうけたらご馳走してね」
「回転寿司でも行こうや」
真弥とお喋りしながら駅に向かった。
バイトも何日かは休みをもらえるだろう。
純夏ちゃんと海に行く約束しちゃっているし。
そう、約束しているんだよ。
彼女の水着姿を夏の思い出にするんだ。
絶対に価値のある水着姿だろう。
「先輩」
「待っていたの?」
改札口の横に純夏ちゃんが待っていた。
「へへっ」
照れくさそうに笑った。
彼女も昨日でテストが終わったらしい。
「……」
「どうかしました?」
「なんもだよ」
うん、絶対に水着姿を拝んでやる。
「バイトのシフトが決まったら連絡入れるね」
「はい」
「二人でどっか行くの?」
真弥が興味津々って顔で聞いてきた。
「海でしょ、オレも行きたい」
「それはダメです」
純夏ちゃんは速攻で拒否の態度を示した。
真弥は寂しそうに肩を落とした。
「英太、純夏ちゃんの水着姿をちゃんと撮ってこいよ」
「分かった、バシバシ盗撮してきてやるぞ」
「やっぱお前は親友だ」
大げさな態度で僕に両手で握手を求めた。
僕もしっかり応えてあげた。
そして二人は彼女を見つめた。
「えっ、そんな……恥ずかしいです」
真っ赤になって困っていた。
年下キャラ。夏にはいいかもしれない。
「エッチなことされないように気をつけるんだよ」
「……」
さっきより顔が赤くなった。
真弥のヤツ、何をバカなことほざいている。
「そんなことしねえって!」
地下鉄を降りて僕と彼女は家に向かって歩き出した。
日差しも少しだけ和らいできた。
久しぶりのバイト。行くのが面倒くさいな。
「さっきはゴメンね。真弥のヤツが変なこと言って」
「いいんです」
「アイツはエロバカなことしか言わないんだよ」
彼女はクスッと笑った。
「先輩だったらされてもいいです」
「なにを?」
「……なんでもないです」
あれ?
なんか怒らした?
なんか少しだけいじけた顔をしたような……
「明日、水着を買いに行ってきます」
「期待しているね」
「よく分かんないけど、がんばります」
恥ずかしそうな顔で彼女は言った。
◇◇
夏休み中の休みは8月の2,3とお盆の1日だけだった。
予想はしていたけど、全然休みがないんだな~
「金崎君、がんばろうね」
大塚さんが笑いながら声を掛けてきた。
「はい、がんばります」
「私はけっこう休むけどね」
「え~マジですか」
「ゴメンね」
そりゃないよ~
一気にテンションが下がってきた。
だったら休みがなさ過ぎるよ。
って、言っても店長に却下されるよな。
「たまに晩ご飯一緒に食べよ」
「ホントですか?」
「だって金崎君、いじけているもん」
「ガキだって思っているんでしょ」
「たまに泊めてあ・げ・る」
ボルテージが一気に上昇した。
それを見て大塚さんがクスッと笑った。
「金崎君のエッチ」
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