第22話 彼女の水着
「金崎君」
優しい声で目が覚めた。
目の前には裸の大塚さんがいた。
眠い……まだ眠っていたい。
「今日は後輩の女の子と海に行くんでしょ」
そうだ、今日は純夏ちゃんと海に行くんだ。
夏休み中のバイトの休みは3日だけ。
そのうちの2日が今日と明日。
「もう6時過ぎたよ」
「ええっ、マジで」
そういえば7時に待ち合わせだ。
暢気に考え事をしている場合じゃない。
朝帰りでかち合ったらドン引きされてしまう。
急いで家に帰らないといかん。
「やっぱ男は若い女の方がいいのよね」
「大塚さん、なんか凄く引っかかること言いましたね」
「どうせ私は年増の女ですよーっだ」
「そう言われたら行きづらいじゃないですか」
「ウソ、ゴメンゴメンいじけないでよ」
そう言いながら、僕を後ろから抱きしめてくれた。
背中に当たる柔らかい感触が気持ちよかった。
「ちょっとヤキモチ焼いているかも」
◇◇
彼女とはマンションの向かいの公園で待ち合わせをしている。
僕は急いで着替えて公園に向かった。
ベンチに座っている彼女は僕に気づいた。
そして、手を振ってペコリとお辞儀をした。
彼女はTシャツにデニムのミニスカみたいなショーパンを穿いていた。
「おはようござます」
「おはよう。じゃあ行こうか」
「はい」
公園を出て道路に出た。
「ちょっとここで待ってて」
「あ、はい」
僕は駐車場に向かった。
兄貴から買った軽自動車。
バイトしまくって買った僕の宝物。
エンジンをかけた。
『ブルル』
初めて助手席に人を乗せて走る。
彼女ができたら乗せるはずだった助手席。
結局、志緒理を乗せることはできなかった。
『プップーッ』
クラクションの音に彼女は気づいた。
僕は窓を開けて手を振った。
「行くよ」
驚いたような顔で僕を見ていた。
そして、慌てて走ってきた。
「車で行くんですか」
「そうだよ」
「免許……この車は?」
「免許もあるし、車もオレのだよ」
「ほえ〜」
助手席に彼女を乗せて、車を発進させた。
調子に乗らないで安全運転をしよう。
「車に乗せるのは純夏ちゃんが初めてだよ」
「ホントですか?」
「うん、普段は乗らないしね」
「私……凄くうれしい」
二人の乗った軽自動車は国道へ出た。
この時間の国道は、まだ混み合っていなかった。
狭い空間の中に彼女の香りが広がっていった。
やっぱり女の子はいい匂いがする。
僕は助手席の彼女を見た。
少し緊張したような顔で前を見ていた。
うっ。
シートベルトが彼女の右胸の膨らみを強調させている……
大きい。
早く海に着きたい。
早く水着姿を見たい。
「どうかしました?」
「ううん、なんでもないよ」
はやる気持ちを抑えつけて運転に集中した。
事故ってしまっては元も子もない。
それにしても、大塚さんや有希那よりはるかにデカイ。
いかんぜよ、いやらしいことを考えては。
やがて街並みがなくなり、遠くに海が見えてきた。
「海が見えてきました」
うれしそうな顔で僕に言った。
もう少しで水着姿を拝められる。
あと少しの辛抱だ。
やっぱ近場の海水浴場にすればよかったかな。
車だから調子に乗って遠出しすぎた。
海辺の駐車場は既に車で混み合っていた。
駐車場を目の前にして車は進まなくなった。
それでも30分位かかってやっと車を止めることができた。
太陽は高く、もうお昼近かった。
「やっと着いた」
「お疲れ様です」
二人で座る場所を探した。
そして、家族連れの多い場所を選んだ。
理由はチャラチャラした連中があまりいないからだ。
「じゃあ着替えてきます」
「うん」
キタキタキター
どんな水着なのかなぁ〜エッチいのかな〜
って、真面目そうだから普通の水着なんだろうな。
僕はぼんやりと海を眺めていた。
「……お待たせしました」
声の方を振り向いた。
恥ずかしそうに彼女は立っていた。
「これでも凄くがんばってみました」
どほっ。
淡いピンクをベースに濃い目のピンクとムラサキ色のビキニだった。
エスニック調の柄は今年の流行なのかな?
いい!
かわいい!
純夏ちゃんメッチャかわいいよ。
それに……やっぱおっぱいおっきい♪
「あんまり見られると恥ずかしいです」
「いいじゃん、だってスゲー似合っているよ」
「ありがとうございます」
それにしても純夏ちゃん。
なんかパンツの方ね、2枚穿いていないかな?
横のリボンの上にもう1本紐があるけど。
「それって変わったデザインだね」
「これですか?」
そう言いながら彼女は僕のすぐ横に座った。
そして水着のリボンを触った。
「2枚になっているんです」
「そうなんだ」
そう言って僕はスポーツドリンクを飲んだ。
「この下はTバックなんです」
「うごっ、うっがはっ」
思いきりむせ返ってしまった。
Tバックですと?
汚れのなさそうな女子高生が、Tバックを装着しているのですか。
上の1枚を脱がせてみたい。
Tバックのお尻を見てみたいよ〜
「先輩、大丈夫ですか?」
「うん、Tバックに過剰反応しただけだよ」
「……エッチです」
「だって、そんなに大胆なものだと思っていなかったも」
「期待しているって言ったから、一大決心で決めたんですよ」
「ありがとう。いい仕事だよ」
「もうエッチ。早く海に入りましょうよ」
僕らは日が傾くまで遊んだ。
逆光に輝く彼女の水着姿が眩しかった。
無邪気に笑う彼女がかわいかった。
志緒理ともこうして笑いあいたかった。
恋人同士ってやっぱこんな感じだよ。
やっぱり彼女欲しいかも。
『ポツポツ』
あれ、雨が降ってきた?
空はまだ晴れているのに……
見上げると、西の空が曇っていた。
「雨降りそうだから帰ろうか」
「……はい」
荷物をまとめて帰る準備をした。
彼女はシャワー室に向かったけど、しばらくして戻ってきた。
「凄く並んでます」
雨の勢いが強くなってきた。
このままじゃ風邪を引いてしまう。
「とりあえず車に戻ろう」
慌てて車に戻った。
「砂だらけになっちゃいますね」
「気にしなくていいよ」
それより着替える場所がないな。
狭い車内で着替えさせるわけにはいかない。
「寒くない?」
「水着はすっかり乾いているから大丈夫です」
結局、水着の上から服を着た。
彼女の水着が見えなくなってしまった。
急に寂しくなってきた。
「進みませんね」
駐車場から国道の手前で事故があったようだ。
お陰で全然前に進まなかった。
「お腹が空きました」
そう言って彼女は下唇を突きだした。
お茶目な表情がかわいかった。
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