Nazca Novels 雪原に舞い散る赤い雪

第24話 二人だけの空間

生活感のない部屋。
大きなベッド。
大きな浴室。
閉鎖された空間。
二人だけの密室。

「うわーお部屋きれい」

テンションの高い彼女の声。
はしゃぐように部屋中を歩き回る。

「お風呂も広くて、曇りガラスがエッチですね」

彼女の目にはこの密室の世界が新鮮に映っている。

「お湯入れちゃいますね」

こんな展開になるとは思っていなかった。
いいや、少しは期待していた。
だけど……

「純夏ちゃん、あのさ」
「脱いじゃお」

僕の目の前で彼女は服を脱ぎだした。
そして彼女は水着姿になった。

「恥ずかしいけど、二人っきりなら大丈夫です」

そして、もう一枚を脱いだ。

「これを脱ぐとこんな感じです」

恥ずかしそうな表情で僕にお尻を見せた。

理性が弾け飛んでしまった。

「あっ」

僕は後ろから彼女を抱きしめた。

「キスしてくれますか」

彼女は振り向きながら言った。
僕は後ろからそのままキスをした。

「先輩待って。あ…」

ベッドの上に押し倒した。
少し強引にホックを外した。

「恥ずかしいです」

僕はキスで唇を塞ぎ、右手を這わせていった。
彼女の体がピクンと反応した。

「先輩、待って」
「待てない」
「だって、砂を落とさないと痛いですよ」

そういえば、シャワーも浴びていない。
彼女の言葉で我に返った。

「ゴメン」
「お風呂に入ってからですよ」
「うん」

僕は先にバスルームに入った。
Tバック姿に欲情し、暴走した自分をお湯に浸かりながら後悔した。

彼女が僕に気があるのは分かっていた。
だけど、それだけでいきなりこんな所に来てしまった。
彼女は本当にいいって思っているのか?
あまりにも勢いだけって感じだぞ。

「あれ?」

バスルームの明かりが暗くなった。

「私も入りますね」

裸の彼女がうっすらと暗いバスルームに映し出されてきた。
白い水着の跡が幻想的に映える。

「そんなに見られると恥ずかしいです」
「ゴ、ゴメン」
「凄く勇気出してるんですよ」

そう言いながらシャワーを浴びた。
体を洗う姿が色っぽかった。

「サッパリしました」

そして、バスタブに入ってきた。
すぐ目の前に裸の彼女がいる。

「二人が入っても全然余裕ですね」
「ねえ、どうして…」

今度は僕がキスされ唇を塞がれた。

「分かっているくせに意地悪です」
「純夏ちゃん」
「優しくしてくださいね」


◇◇


ホテルの横には高速道路。
時折、パトカーのサイレンが聞こえてきた。
それを彼女の甘い声がかき消した。

柔らかく白い躰。
揺れるベッド。
何かを求めるように彷徨う指先。

今日から明日に……
二人は一緒のままその時を共有した。

「先輩」

彼女は何度もキスを求めてきた。

急に現実に戻された。
たぶん男はそういう生き物。
女はどうなのか分からない。
今の彼女を見ていると、男は女より単純な生き物なのかなって思う。
だって彼女は今も僕との時間を大事にしているから。

僕は甘える子猫のような彼女を愛しく思った。
今の時間を大事にしよう。
後のことは後で考えよう。
僕は彼女を抱きしめた。

僕と彼女は裸のまま朝まで眠った。


◇◇


キスで眠り、キスで起きた。

「起こしちゃいましたね」

僕は彼女の別の場所にキスをした。

「エッチです」
「おはよ」
「おはようございます」

しばらくの時間をベッドの中でイチャイチャして過ごした。
彼女のかわいさと罪悪感が複雑に交差した。

「私、付き合ってくれとは言いませんから」
「えっ?」
「もっと知って欲しいし、もっと先輩を知りたいです」

予想していない言葉だった。
責任を取って彼氏になるしかないって思っていた。
そうしないと許してもらえないと思っていた。

「有希那先輩や、葵先輩とかにはこんなことしてほしくないです」
「有希那が言ったんだ」
「言わなかったけど、態度で分かりますよ」
「女って怖いな」
「はい。怖いんですよ」

そう言いながら僕の胸に顔を埋めた。

「できれば私のこと好きになってほしいな」
「うん」
「またここに来ましょうね」
「マジで?」
「だって……またしたいも」

甘えた瞳で彼女は言った。
そして、唇が重なった。

この出来事が近い将来、どうなるとも知らずに。

← Back Index Next →

ランキングに参加中です。一押し応援して頂けたら嬉しいです。
NEWVEL 乙女の裏路地 Wandering
Network
恋愛ファンタジー
小説サーチ
HONなび
copyright (C) 2009 Nazca Novels All Rights Reserved.