Nazca Novels 雪原に舞い散る赤い雪

第27話 変化

「マジでしちゃったの?」
「何か問題ありました?」
「大事なことでしょ」
「だから英太さんで良かったんです」
「純夏……」

そう言って笑顔で答える純夏。
だけど、真っ直ぐな目をして私を見ていた。
それは英太への想いの強さに感じた。

私だってこの前、英太と……

純夏に嫉妬している私がいる。
中学の頃の私…あの日の私はもういない。
だけど、あの時は葵に英太を奪われた。
今度は純夏に……
違う! 私はもう英太なんか好きでもない。
たまたま英太にあげちゃっただけ。
ちょっと転んでケガをした程度の話。
別に大した大事なものでもない。
そうだよ。気にしたことじゃないよ。

なのに……この気持ちはなんだろう?
私だけ見放されているような虚しさは。

「有希那先輩はどうして彼氏を作らないんですか?」
「どうしてって…どうしてかなぁ」
「もう何人フッたんです?」
「えっと、何人だろ?」
「英太さんを待っているからですか?」
「……あんなヤツ、待ってなんかいないわよ」

英太は違う。違うよ絶対。

「じゃあ応援してくださいね」
「あ…うん」
「そうじゃないと、葵先輩に言っちゃいます」
「えっ? 何を?」
「あの日の夜、有希那先輩と英太さんがしたことです」

ウソ? どうして純夏がしっているの?

「……英太が喋ったの?」
「有希那先輩の態度で分かりましたよ」
「……」

合コンの時の話を純夏はいろいろと聞いてきた。
私はノリノリの葵のことを面白おかしく話した。
英太のことを聞かれたとき、ウソを言って誤魔化した。
英太が調子に乗って、お酒を飲んで酔っぱらって大変だったと。
つじつまが合っているとかを考えもしないで。
純夏にそれを見抜かれていた。

「邪魔はさせませんから」
「……純夏」

一瞬、殺気だった視線を感じた。
私は何も言えずに下を向いた。

「HRが始まりますよ」

そう言って純夏は走って階段を上っていった。


◇◇


2学期が始まってしまった。
朝イチで相良さんがこの前のことで謝りに来た。
あの後、志緒理から連絡があって思いきり説教をしたそうだ。
とりあえずは一件落着ということだ。
ただ一つ、相良さんは志緒理の顔色が悪いと心配していた。

「ほう、あの子に目を付けているワケか」
「背後霊のように寄ってくるなよ、遠山の金さん」
「けっこうかわいいし、おっぱいデカそうよね」
「あのな」
「違うの?」
「違う!」

コイツ、頭はいいけど何を考えているのか分からん。
それは遠山だけではないか。
志緒理や大塚さん、葵に有希那、それに純夏ちゃん。
みんな何を考えているのか分からないよ。
それは向こうから見ても同じこと。
仮に考えていることが分かったとしても、100%理解し合えるなんて不可能だ。
所詮、人なんてその程度だから。
理解して分かり合うより、妥協して譲り合う。
そうやって人と人は繋がっていく生き物だから。

「金崎君、後ろ」
「え?」

振り返ると志緒理が歩いてきた。
彼女は少しだけ驚いたような表情をした。
その表情は困った表情に変化していった。

「おはよう」
「あ…おはよ」

小さな声で答えた。
僕に怯えているようにも見えた。

「無理するなよ」
「うん」

小さくうなずくと、僕の横を通り過ぎていった。
表情は暗く、顔色が確かに悪かった。
彼女はもう、本当の笑顔は取り戻せない……そんな気がした。
変わってしまった志緒理が痛々しかった。

「まだ気になるの?」
「べーつに」

・・・・・・⇒

始業式だったので学校は午前中で終わった。
帰りに真弥と一緒にパンを食べながら話をした。

「そうそう、葵のヤツな」

葵は合コンで知り合ったヤツと付き合い始めたそうだ。
かなり意気投合していたって感じだったもんな。

「木下っていうんだ。いいヤツだよ」

葵はいいよな。
前向きだし、自分のペースでスタスタ歩いて行く。
時々周りを巻き込むけどね。
まっ、葵のことはどうでもいいや。

「純夏ちゃんだっけ? どうなのよ」
「どうなのよって言われてもな」
「付き合わないの?」
「分かんない」

純夏ちゃんが彼女になったら、大塚さんとは……
やっぱもうダメだよなぁ〜
彼女ができたら無理だよな。
って、エッチな基準で考えちゃっていないか?

「英太、いやらしいこと考えているべ」
「うっ」

真弥に見事に当てられた。
さすが親友だ。

「噂をすれば、おい彼女がいるぞ」

地下鉄に降りる階段に彼女は立っていた。
僕に気付いて手を振った。

「待っていてくれたの?」
「会いたかったから待っちゃいました」
「か〜っ、英太君は幸せ者だ」
「お前は黙れ」

僕と真弥のやり取りを見て彼女は笑った。

「お腹が空きました」
「何か食べようか」
「はい」
「オレは仲間に入っていいのかな?」
「特別にいいですよ」

いたずらっぽい表情をして彼女は言った。

初めてあったときの彼女。
今、僕の隣にいる彼女。
まるで別人に見えた。
こんなにも変わっていくものなのか、女の子って。

もうすぐ夏だよ! 今年の流行はコレだよ♪
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