Nazca Novels 雪原に舞い散る赤い雪

第3話 名前

「あの子元カノなの?」
「うん、前の彼女」
「会ったりしているの?」
「してないよ」
「本当?」
「ホントだって」

志緒理は今にも泣き出しそうな顔をしていた。

「たまたま会っただけだよ、学校すぐそこだから」
「そうなんだ」

意外とヤキモチ焼きなのか志緒理は。
それは面倒だな。

「このストラップに決めたよ」
「なんですかコレ?」
「可愛いでしょ」
「どっかの民族小物みたいだよ」
「可愛いでしょ」
「……そだね」

これ携帯に付けるのか〜恥ずかしいぞコレ。
その後2人でリゾットを食べた。

「家まで送るよ」
「まだ帰りたくない」
「もう9時だよ」
「……分かった」

少しふて腐れた顔で志緒理が言った。

「ねぇ手繋いでいい?」
「こう?」

僕は志緒理の手を握った。

「うん」

嬉しそうに志緒理が笑った。
かわいいじゃん。
その時、最近流行っている曲が流れ始めた。
志緒理の携帯の着メロだった。
でも、志緒理は電話に出ようとしなかった。

「出ないの?」
「うん、いいんだ」
「いいよ、気にしなくて」
「今は2人でいたいの」

そう言って僕の手を強く握った。

「そっか」
「元カノに英太って呼ばれてたでしょ」
「呼ばれてたね」
「私も英太って呼んでいい?」
「いいよ」
「英太」
「いきなり呼ぶなよ、照れくさいって」

変な汗が出てきた。

「英太〜志緒理って呼んで」
「南志緒理」
「なんでフルネームなの!」
「志緒理」
「ホントだなんか照れくさいね」

嬉しそうな顔で笑った。
そして、繋いだ手を離して腕に抱きついてきた。
志緒理の柔らかい感触が恥ずかしかった。

「ここ私の家」

5階建てのマンション……ここに住んでいるんだ。

「そしたら明日ね」
「うん」
「休むなよ」
「ちゃんと行くよ」

女の子と一緒、久しぶりに疲れた。


◇◇


「今家に帰ってきたトコ えっ今日は行かないよ、疲れたし〜
明日?明日は大丈夫かな〜うん、分かったよ
彼氏?彼氏じゃないって、ただの男友達だよ」


◇◇


オレと志緒理の家は地下鉄の駅で計算すると6つの駅か……
うわーかなり遠いな。
って、いうか送ったりするのが面倒だな。
やっぱ兄貴の車を早くゲットするしかないな。
でもガソリン代がかかるな〜

なんて考えながら一人寂しく地下鉄に乗った。

「あら偶然だね英太」

再び葵と有希那に会った。
もう一人の子も一緒にいた。

「まだいたのか」
「話し込んでいたらこんな時間になったよ」
「遅いな、もう10時になるぞ」
「あんたは私の父親か」

葵がツッコミを入れた。
そのやりとりを見ていたもう一人の子がクスッと笑った。

「あら、さすがに元恋人同士は息が合うわね」

有希那が割り込んできた。

「やかましいわ」

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