Nazca Novels 雪原に舞い散る赤い雪

第7話 履歴

バイト先の店長からの電話で目が覚めた。
時計を見たら12時少し前だった。
げっ、もったいないな〜せっかくの休日なのに。
店長からの電話の用件は3時に入れってことだった。やっぱりな〜
結局今日は何も出来ないやんか。


重い足どりでバイト先に到着した。

「金崎、明日は2時から入ってくれ」
「2時からですか?」
「いいじゃん、ガソリン代稼げよ」
「はあ」

店長は僕が車を所有したことを知っている。
そこを巧みに突いてきた。
仕方がないから、ありがたいと思って働くか。

「金崎、働きます」
「その意気だ、若人よ」

この人、まだ若いのにどうもノリが古いな〜

「今日は大塚さんが休みになったからヨロシクな」

え〜っ、マジで休みなの?大塚さん。
一気にやる気が萎んでいった。
大塚さんがいないバイトなんて……
牛タンの無い焼き肉屋みたいなものだよ。
今日は長いバイトになりそうだよ。

なんて思ったのが大間違いだった。
書籍の入れ替えや在庫の確認などからゴミの分別までと大忙しだった。
店長も少しは手伝ってくださいよ〜
大塚さんがいないと楽しくないし大変だよ。
今日のバイトはあっという間に終わった。
ドッツリ疲れたよ。


「お疲れ様でした」
「お疲れ様、明日もヨロシクな」
「明日は……」
「大塚さんは定時にちゃんと来るよ」

良かった。一人じゃ厳しすぎるよ。
ふと携帯を見ると着信ありになっていた。
バイト中はサイレントにしてあるので気が付かない。
履歴は全部志緒理からだった。
……あいつ12回もかけてきたのか。
メールも12回入っていた。
別に昨日のことを怒っていた訳じゃないけど、疲れていたので電話もメールもする気になれなかった。
もう一度かかってきたら出よう。
言い訳はバイト中だったからって言っておこう。

結局それっきり連絡はなかった。



…翌日…
起きたら12時前だった。
昨日とほぼ同じ時間に起きた。
今日も何も出来やしない。
シャワー浴びて昼飯食ってバイトの用意をする…
なんか高校生活をエンジョイしていないな〜オレ。

そういえば志緒理から連絡が来ていない。
アイツいじけちゃったのかな?
今更こっちも電話かけづらいよな。
バイトに行ったら電話には出られないぞ。

やっぱり連絡は来なかった。
そして、今日のバイトが始まった。

土日は平日とは客層が違う。
家族連れや年配のお客が多い。
小学生の文房具関連がよく売れる。

「金崎君おはよう」
「おはようございます」

大塚さんが来た。
やっぱかわいくて色っぽいな〜

「どうしたの?」
「いえ、なんでもないよ」
「昨日はゴメンね〜」
「超忙しかったっすよ」
「帰りにご飯おごるから許してぇ〜」

うわっ、今の表情めっちゃかわいかった。
なんでオレって高校生なんだよ〜
なんで3年早く生んでくれなかったんだよ〜母さん。
と、今更言っても無駄なのは分かっているけど…

「彼女と仲良くいってる?」
「えと、まぁぼちぼち」
「なんか冴えないね」
「大塚さんはどうなんですか?」
「私にそんなこと聞くんだ」

彼女は頬を膨らませ怒った顔をした。

「オレ、地雷を踏んづけました?」
「足離したらドッカーンといくよ」
「謝りますって」
「いいよ別に……事実だもん」

こんなかわいい人を…なんて酷い野郎なんだ。
尻の穴にロケット花火を突っ込んでやりたいぞ。

「まぁ、なるようになるさ」

寂しそうな彼女を後ろから抱きしめたくなった。


◇◇


「何食べる?」
「オレはあさりのパスタ」
「私はカルボナーラ。あっパフェも食べたいかも」
「ヤケ食いですか?」
「かねざきぃ〜もういっぺん言ってみろや〜あぁ〜」
「うわっ、昔のヤンキーみたい……すいません言い過ぎました」
「金崎君は仲良くするんだよ」
「心がけます」

そういえば志緒理から電話入っているかも…

「オレ便所行ってきます」

トイレに入って携帯を見た。
うわっ、着信がめっちゃ入っている…
メールもガッツリ入っている…

『バイトなの?』
『電話出られないよね』
『休憩時間に連絡して(*^_^*)』
『寂しいな(>_<)』
『メールくらいしてよ(o`3´o)ム-』
『英太のバカ!』
『私のことなんかどうでもいいんだ』
『バカバカバカ〜』
『いいよいいよ』
『泣いちゃうから』
『お願いだよ』
『バカ』
『バカ』
『バカ』
『もういい』
『他の女と一緒なんでしょ』
『その女、絶対に許さないから』
『私の英太なんだから』

具合が悪くなってきた。
急に食欲が無くなってきた。
激しく怒りすぎだってーの!
でも、連絡入れないとな〜
僕は志緒理に連絡を入れた。

電話に出てくれない。
怒ってる……
まいったな〜
仕方がないのでメールを入れた。

『ゴメン、バイト今終わったとこ』

あとで連絡がくるだろう。
ちゃんと謝るよ。ゴメンね志緒理。

世の中、知らないことの方がいいときがある。
知ってしまうと辛くて耐えられないことが多いから。
些細なことでも許せなくなったりする。
それがたとえ頭の中では理解できていたとしていても。
僕はその日が来るのが、そう遠くではないということにまだ気づいていない……

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