Nazca Novels 雪原に舞い散る赤い雪

第9話 崩れ落ちる

月曜日に志緒理とちょっとケンカしたけど、お互いに誤解していただけだった。
今週はそれ以外、何事もなく週末を迎えようとしていた。
志緒理も今週は休むことなく学校に来ていた。
帰りは一緒に仲良く帰った。
うん、普通の高校生のカップルだよ。
車でドライブっていきたいけど、土日は昼からバイトだ。
志緒理を驚かせようと思って内緒にしているけど、驚かせる機会がないな。
せっかく車があるのにどこも行けないじゃん。
バイト辞めたいけど辞めるわけにいかない。大塚さんに会えなくなるし……
オレって大学行けるのか?こんな調子で。

「英太って土日もバイトだよね」
「うん、ゴメン」
「謝らなくていいよ」
「土日は何してる?」
「英太と遊べないから友達の家に泊まりに行くよ」
「そっか」

軽くイヤミを言われた。

軽く凹んだ。


…土曜日…

「金崎君、今日は終わったらみんなで遊びに行くんだよ」
「え?どこに行くんですか?」
「やっぱり忘れてるし」
「あっ、ボウリングだ」

たまに職場のみんなと遊びに行くことがある。
月曜日に言われていたけど忘れていた。
面倒だけど付き合いも大事だからなぁ。
ご飯食べて、ボウリングしてカラオケ……お決まりのパターンですか。
帰りは夜中だよ。

「金崎君」
「なんだ、遊び人の金さんか」
「嫌な呼び方しないでよ!どちらかっていうと、アンタの方が金さんじゃない」
「どうした遠山」
「一応お客さんなんですけど」
「いらっしゃいませ」

遠山多恵子…彼女は同じ学校の生徒で同じ中学出身だ。
男受けする顔なのでいろいろと噂があるけど、話してみると意外といいヤツだった。

「まだ付き合っているの?」
「まあね」
「そっ、あんまりペースに合わせちゃダメだよ」
「なんだそれ」
「同じ中学出だからね、一応は仲間だから」
「はぁ?」
「あの子、私的にはおすすめできないな」

真弥といい、遠山といい志緒理のことを誤解している。
志緒理はいろいろ大変だってことを知らない。
余計なお世話だ。

「ありがと、心配してくれて」
「どうでもいいけどね」

どうでもいいなら放っておいてくれよ。


◇◇


「美味しかったね〜金崎君」
「腹がキツイっすよ」
「次は転がすよ〜」

社会人に大学生……みんな高校生の僕より元気がいい。なぜ?

ふと空を見上げると、ビルの上で観覧車が回っていた。
乗ってみると、どんな感じなんだろう?
ネオン街の川の中に浮かんでいるように見えるだろうか?
夜景が目の前に広がって見えるのだろうか?
だけど、高所恐怖症の僕は乗ってみたいとは思わない。


エレベーターから複数の若い男女が降りてきた。
イチャついているのか、じゃれているのか微妙だけど、みんな仲の良さそうな雰囲気で楽しそうだ。


あ……


「金崎君、こっちだよ」
「あっ、はい」

その中に志緒理の姿があった。
彼女は驚いた表情をして僕を見ていた。
そして、隣にいる男の腕から手を離した。

「英太、あの女は気をつけた方がいい」

この間、真弥が言った言葉。
信用はしていたけど、どこかで志緒理を疑っていた。
だから意外とショックではなかった。
かえって良かったよ。
付き合った日がまだ浅いから。

僕は冷めた顔で志緒理を見ながら、何事もなかったように通り過ぎた。

面倒くさいのはもうたくさんだ。
やっぱり彼女なんていらない。
結局はこうやって裏切られてしまうから。
無駄なことに時間を費やしたくない。

あんなヤツはさっさと別れてしまおう。

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