第12話 つまんない?
掃除、洗濯、料理…お母さんって凄いな〜
毎日よくできるよね〜
しかも日中はパートしているし。
冬花は母の偉大さを改めて感じました。
「冬花、お塩つけすぎ」
「つけすぎ?
え〜難しいよ」
「自分でやるって決めたんでしょ」
「だって昨日頑張ったから疲れてるも」
「あーあ、もう挫折したの?
織川君に告げ口しちゃおう」
「分かったって、自分でやるから〜」
「そんなんじゃ間に合わないよ」
お母さんって意地悪だな〜
こんなんじゃ遊びにも行けないし、勉強もできないよ。勉強してないけど……
・・・・・⇒
お〜やってるやってる。
あれ?
咲希と由美だ。
「あー冬花」
「咲希、勝ってる?」
「勝ってるよ、今4回裏の攻撃だよ」
「凄いね」
「冬花、なんだか疲れてない?
げっそりしてるけど」
「いろいろありまして……はい」
うちの学校って野球よりサッカーの方が人気があって、地域の少年野球チームの人手不足に困っているそうです。
それで織川君が室山君に頼まれて試合に出ることになったんだよ。
「織川君ってどこ守るの?」
「ショートだよ」
「1塁、2塁、3塁、4塁、ショートってどこ?」
「ショートって2塁と3塁の間だよ、4塁はないんじゃない?」
「4塁はホームだよ」
「うわっ」
織川君が後ろからニョーって出てきました。
ユニホーム姿の織川君……凛々しいです。
「勝てる?」
「負けるわけにはいかないよ。出てくれって頼まれたから」
「頼まれたから?」
「必要とされたんだ、それに答えなきゃ」
もの凄く集中している表情……かっこいいです。
「次の次、オレの打席だから」
「ガンバってね」
「うん」
ところで織川君って野球できるの?見たこと無いけど……
あっ、織川君が打席に入ったよ。
なんか、こっちが緊張しちゃうよ。
『カキーン!』
織川君のバットから快音が響きました。
打球は誰も守っていないところに飛んでいきました。
ランナーが2人帰ってきて、織川君は3塁に行きました。
7対2になって5点差のリードです。
私に向かって織川君がVサインをしてくれました。
うれしい、それに周りの視線が恥ずかしいです。
「織川君って野球上手なんだね」
「冬花知らないの?織川君ってリトルリーグのレギュラーだったんだよ」
「咲希、それって凄いの?」
「レベルが違うんだって、室山君が言ってた」
「そうなんだ。ん?だったんだよって今は違うの?」
「最近辞めたらしいよ」
「へーどうしてだろうね」
『ゲームセット』
見事に勝ちました。
1回しか勝っていませんけど、次は準決勝です。
「織川く……」
織川君の周りに他のクラスの女の子が集まっていました。
三高さん達の仲良しグループです。
織川君は稲橋君と仲良しグループさん達と楽しそうにお話ししていました。
なんか、急につまらなくなってきました。
せっかくお昼のお弁当作ってきたのに……
食べさせてあげないぞ〜
織川君のバカ。
咲希と由美も楽しそうに室山君と福永君とお話中です。
「冬花」
「なに」
「どうした?なんか怒ってる?」
「怒ってない」
「……」
「志典、昼飯食おうぜ」
稲橋君が織川君に声を掛けてきました。
「オレ、コンビ二行って買ってくるわ」
「買わなくても食うだけあるから」
「マジで?」
織川君が行っちゃう。
早起きして作ったお弁当……今日も頑張ったのに。
「悪い、オレこっちで食べるから」
えっ、行かないの?
「冬花、オレ腹減ったよ」
私は織川君の顔を見ました。
「なんか食べたいな」
織川君が優しく笑ってくれました。
「うん」
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