Nazca Novels 冬花の夏〜小5の夏の恋心〜

第21話 勝負下着?

大事を取って今日は病院に入院することになった。
明日検査して、それで異常がなければ退院になるそうだ。

「あれはウソ、あの時はああ言うしか方法がなかったんだ」

ホントはその通りだよって言うはずだった。
その方が楽になれたから……
でも、冬花の顔を見たらそれができなかった。

大人っぽいのか、ガキ臭いのかよく分からない女の子。
それが冬花だった。
同じクラスになってからずっと気になっていた。
オレは母さんとお父さんの顔色をいつもうかがって過ごしてきたから。
いい子でいないと居場所が無くなるって思っていたから。
いつもマイペースでのんびりな冬花が羨ましかった。

冬花の笑う顔が癒してくれた。
冬花の笑う顔が好きだった。
そして、冬花を好きになった。

明日で冬花とサヨナラする。

最後は冬花の笑う顔を見てお別れしたい。


〜翌日〜

「咲希、由美、先に帰るから」
「今日の冬花はテンション高かったね」
「仲直り? ってケンカなんてしてた?」
「分かんない」
「冬花って未だによく分かんないよ」


◇◇


「ただいま〜行ってきま〜す」
「あらあら忙しいわね、織川君の所に行くの?」
「うん」
「そんなに好きになっちゃったんだ」
「お母さん、こういうのってまだ早いの?」
「心も体も大人になってきた証拠だよ」

なんか急に恥ずかしくなってきちゃった。
最近は急に胸も大きくなってきたからブラも着けたよ……スポブラだけど。
洋服とか下着とかも気にするようになってきたもんね。
わたしも大人になってきているんだな〜
おばさんっぽいより大人っぽいって言われたいな。
織川君をドキッとさせてやるのだ〜

「やっぱり着替えていく」

この前買ってもらった上下おそろいの下着を着けていこ。
そうです冬花の勝負下着です!ヽ(≧∇≦)ノ
……ってなに考えているんだろ。絶対お姉ちゃんの影響だよ。
気を取り直して、オキニのデニムのミニスカ装着です。

「ふゆタン、靴下はニーソにしなさい!」
「うひょーお姉ちゃん、ビックリした」
「Tシャツはこれにしなさい」

イマイチ変な予感がしてきたような……

「あの、これでいいかな?」
「うむ、これで冬花の彼氏も萌え萌えでメロメロで……いやんエッチ〜」
「お姉ちゃん、もういいよ」

最近急激にお姉ちゃんがエロおやじ化してきたよ。
私よりずっとキレイでかわいいのに……
どうして彼氏いないんだろう?

「冬花、座るときは横でなくて正面に座りなさいよ」
「なんで?」
「いいから言うとおりにしなさい」
「分かったよ」

う〜ん、よく分かんないや。
まっ、お姉ちゃんは放って置いてもう行かなきゃ。

「行ってきま〜す」
「冬花」
「なに?」
「あら、今日は一段とかわいいわねぇ」
「そうかな」

お母さん、なんか恥ずかしいよ〜どうしちゃったの?

「冬花は今を大事にしてね。大人になっていくと悲しいことの方が多くなっていくから……」
「えっうん、どうしたの?」
「なんでもないよ、早く行ってきなさい」

どうしたのかな?お母さん、急に変なこと言い出したりして。
言ってることはなんとなく分かるけど……
私にはもう少し先のことだよ。
今は織川君に会えるのが楽しみなんだ。


◇◇


「学校行けなかったね」
「しょうがないよ」
「お父さんは先に行くけど、本当に大丈…いや、志典なら心配いらないか」
「大丈夫です」
「向こうに行ったらキャッチボールでもしような」
「はい」

今日は何もないあの部屋で、タオルケット一枚で寝る。
冬花に会うのも今日で最後だ。
もっと冬花と一緒に遊びたかったな。
子供の方が楽だっていうけど、オレは早く大人になりたいな。
だけどそれは無理、明日になったらこの街を出て行くんだ。
今は早く冬花の笑う顔が見たいな。
冬花に会いたいよ。

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