Nazca Novels 冬花の夏〜小5の夏の恋心〜

第23話 キスしちゃった?

「もう少しだよ」
「けっこう急だな」

おばあちゃんの家の裏には小高い山になってて、そこには畑があります。
畑に通じる道はよその人も勝手に通ったりしています。
畑の脇にはモミジの木があります。
おばあちゃんと収穫した野菜を、この木の下で食べたりしました。

「おー眺めいいな」
「でしょ」

街が一望できるのです。
私の大好きな場所です。

「この場所が一番好きなんだ」
「いい場所だよ」
「あそこが駅だよ」
「ホントだ」

しばらく二人で景色を眺めていました。
空が水色からオレンジ色になってきました。

「これ、冬花にあげるよ」
「なにこれ? あけていい?」
「いいよ」

箱を開けてみると、ネックレスが入っていました。
ダイヤが付いたハートに青く輝くような石が付いています。

「わーキレイ、これ何?」
「冬花は12月生まれだから12月の誕生石」
「これ私の誕生石なんだ」
「タンザナイトって言うんだ」
「私もらっていいの?」
「大切にしてくれるとうれしいな」
「一生大切にするよ」

うれしすぎて涙が出てきちゃいました。

「おい、泣くなって」
「だって、凄くうれしいんだもん」
「付けてみろよ」

織川君が慣れない手つきでネックレスを付けてくれました。
子供の私には、まだまだ早くて大人っぽいネックレス。
織川君といると、不思議と私は大人の女性になったような気持ちになります。
こうして横にいるだけで、優しい気持ちになれる。

『伝えてもいいし、胸の中にしまっておいてもいい。それは冬花が決めることだよ』

この前、お姉ちゃんが言った言葉。


「私、織川君が好きです」


言っちゃった。
好きって言っちゃった。

「冬花……」
「はい」




『チュッ』




今のキス?


キスしちゃった。


頭の中が真っ白になりました。
体中があっという間に熱くなってきたのが分かります。
心臓が壊れそうなほど、ドキドキしています。
周りの音なんて何も聞こえてきません。
息ができなくなるくらい……もうどうしていいのか分からない。
どうしよう……織川君の顔が見れない。

「冬花」
「は…は…はい」

あ〜ん、どうしたらいいの?
誰か助けて〜

あ。

織川君が私の頭を優しく撫でてくれました。

「あの、あの、織川君」

恐る恐る織川君の顔を見ました。

「冬花」
「はい」

織川君の唇……
私とキスをした唇…
もう一度キスしてほしい。

「また会えるといいな」
「……はい」

ドキドキしすぎて織川君の言葉の意味が分かりませんでした。

「帰ろうか」

織川君は左手を差し出してきました。

「うん」

私は右手を差し出しました。
織川君の手……温かいです。

手を繋ぎながら急な坂道を歩きました。
右手に織川君を感じながら。

← Back Index Next →

ランキングに参加中です。一押し応援して頂けたら嬉しいです。
NEWVEL 乙女の裏路地 Wandering
Network
恋愛ファンタジー
小説サーチ
HONなび
copyright (C) 2009 Nazca Novels All Rights Reserved.