第24話 飛んでいきたい?
あ…家に着いちゃってる。
何も会話もできないまま家に着きました。
「着いたな」
織川君の温かい手……繋いだこの手を離したくないよ。
「お…織川君、また明日」
ホントはまだまだ一緒にいたいよ。
「あっ」
織川君が抱きしめてくれました。
ミントの優しい香り。
気が遠くなるほどドキドキが止まらないです。
このままずっとこうしていたいな。
「じゃあな」
「うん、バイバイ」
織川君がだんだん小さくなっていきました。
もう会えなくなるみたいで悲しいかも。
織川君、大好きだよ。
◇◇
顔……洗いたくないな。
歯は磨かないと虫歯になっちゃうな。
だけど、織川君の唇の感触が無くなっちゃうよ。
キスしたんだよね。
冬花は織川君とキスしたんだよね。
キスってこんなにうれしくってドキドキして、幸せな気持ちになるんだ。
毎日織川君にキスしてほしいな
どうしよう、ドキドキが止まらなくて絶対眠れないよ。
「ふゆタン、どうしたの?」
「うぎゃっ、お姉ちゃん」
「顔が赤いけど、あ〜もしかしてキスしちゃった?」
「キ…キス? キスはキス…キスは……してないよ」
「顔が真っ赤になっているよ。絶対にキスしたんだその顔は」
「してないってお姉ちゃん」
「唇にターッチ」
「それは絶対ダメ!」
はっ、思わず言っちゃった。
「玄関で何やってるの?」
「お母さん、ふゆタンが彼氏とキスしたんだって」
「あらあら〜で、なんで夏花が涙ぐんでいるの?」
「小学生に先超された〜うわーん、ふゆタンなんて大嫌いなんだから」
◇◇
最後の晩ご飯はコンビニ弁当か。
家の中が凄く広く感じるな。
あるのは明日の着替えとバスタオルくらい。
バッグを枕に、バスタオルを布団にして最後の夜を過ごすだけ。
カーテンもないから月明かりを浴びて寝よう。
冬花にキスしちゃったな。
とりあえず歯がぶつからなくて良かった。
ゴメンな。
何も知らないのにキスして。
オレだって初めてだったんだぞ。
だから冬花で良かった。
冬花でうれしかった。
冬花……オレ行きたくないよ。
どうしてこうなるんだよ。
オレ悪いことなんて一度もやってないのに。
どうしてこんな目に遭わなきゃならないんだよ。
オレ早く大人になりたいよ。
そして、冬花を迎えに来たいよ。
……そんなの無理だって。
ガキのオレだって分かっているよ。
冬花だってそのうち忘れて好きなヤツできるって。
彼氏ができて忘れちゃうんだ。
そんなの分かってるって。
◇◇
もう織川君寝ちゃったかな?
もう夜中の1時だもんね。
私はまだドキドキしていて眠れないんだよ。
どうしてくれんの?
こんなに好きにさせた織川君のせいだよ。
明日もキスしてほしくなっちゃうよ。
冬花は今すぐにでも織川君に会いたいです。
このまま織川君の家まで鳥になって飛んでいきたいです。
織川君と手を繋いで眠りたいです。
だけど、そんなことできない。
今私の一番の願いは、早く朝が来て欲しいです。
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