Nazca Novels 冬花の夏〜小5の夏の恋心〜

第25話 どうする?

「ちゃんとキレイに結んでよ」
「そんなにかわいくしちゃって、女に目覚めちゃったの?」
「別にいつも通りだよ」
「リップは付けてるし、三つ編みだし、彼氏できるとそこまで変わるんだ」

お姉ちゃん、朝から恥ずかしいこと言わないでよ。
顔が熱くなってきちゃったでしょ。

「べっ別にそんな訳じゃないよぅ」
「私もふゆタンみたいに変わりたいよ〜彼氏欲しいよ〜チューしたいよ〜」

なんかお姉ちゃん……怖いです。

「ふゆタン、チューしようよ」
「ふぎゃー、嫌だよ」

『バシッ』

「ぢゅっ」

「夏花、百合に走るのはやめなさい」

「もう行くね、お姉ちゃん」
「いってらっしゃいのキスを」
「絶対にイヤ!」
「姉はとっても悲しいです」


◇◇


「宮川君おはよ」
「おう」

沢田冬花、のんびり屋で年寄り臭いことをよく言うヤツ。
あだ名はおばさん。
きっとアイツの家は楽しい家なんだろな。
家族みんな仲がいいんだろうな。
オレの家とは全然違う。
うちは父さんと母さんの仲が悪い。
最近はまともな会話をしているのを見たこと無い。
父さんは飲み屋の女の人の家に泊まったりして帰ってこなかったりする。
母さんも母さんで、他に男がいる。
最悪の夫婦だ。
それにオレはこの二人から必要とされていない。
だから早く大人になって家を出て行きたい。
コイツらからサヨナラしてやるんだ。

織川の母さんがそういう仕事をしているって聞いたときから、織川が嫌だった。
そんなの見当違いって分かっていたけど、嫌いになった。
沢田が織川と仲良くしているのを見て腹が立った。
織川の冷めた大人みたいな表情が悔しかった。
だからあんなバカなことを言ってしまった。

「お前、誰からも必要とされなくなるぞ。それって悲しいぞ」

織川に言われた。
こんなオレだって誰かに必要とされたい。
アイツに殴られて分かった。
じゃないと生きていく意味がないから。
織川には感謝している。
もっと仲良くなりたかったな。
だけど、アイツはもう来ない。

沢田、お前は泣いちゃうだろうな。
お前は織川が好きだから。

織川、お前はもう行っちまったのか?
もう帰ってこないのか?
沢田のことどうするんだ?
アイツは何も知らないで笑っているぞ。
何も知らないであんなに楽しそうにしているぞ。
どうするんだよ。
オレはアイツの悲しい顔は見たくないぞ。
オレがお前だったら絶対にそばにいてやるぞ。

だけど、オレにはできないんだ。
織川じゃないとできないんだ。
オレは沢田には必要とされていないから。

「沢田」
「えっ、なに宮川君」
「あのさ……いや、なんでもない」
「???」
「ゴメン、なんでもないよ」

言えねーよ、そんなこと。
そんなこと言えるわけがないだろう。
オレ、何もしてあげられないよ。

織川のバカ野郎。

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