第26話 サボるの?
遅いな〜織川君。
だけど、どんな顔して会えばいいの?
だんだんドキドキしてきたよ。
でも早く来ないかな〜
「冬花、顔が真っ赤だよ」
「え? 赤い? 顔が?」
「織川君とキスしたとか?」
「キ…キス? しないよ、してないよ由美、キスなんてホントにハハハ」
「なんかメチャ怪しい〜ねえ咲希」
「その顔は絶対にしたって顔だ」
「キスしたんだ。冬花いいな〜由美もキスしたいな〜」
「だから@※ΩΔΨ≒〜」
「口が回ってないよ」
熱い、顔がメチャメチャ熱いです。
「これこれ、席に戻りなさい」
先生に怒られてしまいました。
あれ? 先生来るのが早くないですか?
「授業の前にお知らせがあります」
はて、何だろう?
「織川君のことですが、実は札幌に転校しました。みんなにはお世話になりましたって伝えてくださいと彼が言っていました」
あらら、先生ったら何をおっしゃっているのでしょう。
今日は4月1日じゃあるわけないし。
笑えない冗談はやめてほしいよ。
って、そんな真顔で……
私、夢見ているのかな?
だって、織川君そんなこと一言も言っていなかったよ。
あっ、違う。
「また会えるといいな」
織川君、そういう意味だったの?
あの時は全然分からなかった……その言葉の意味。
天国にいた私は地獄の底に突き落とされてしまいました。
クラスの数人の女の子が泣いているのが分かりました。
教室全体が暗い雰囲気に包まれています。
私は何も考えることができなくなってしまいました。
頭の中が真っ白になったまま、ボーッと窓の外の空を見つめるだけでした。
雲のない青く澄みきったきれいな空です。
もう会えないんだ。
織川君のウソつき。
◇◇
2時間目の授業が終わりました。
「うえ〜ん冬花」
由美が泣いています。
「冬花、どうするの? 先生に聞けば分かると思うよ」
「咲希、いいの」
「どうして?」
「だって、そうしてほしくないから織川君は何も言わなかったと思うもん」
「でも……」
織川君はだから何も教えてくれなかったんだよ。
私はそれだけの人ってことなんだよ。
「沢田」
「なに? 宮川君」
「お前、織川に会わなくて平気なのか?」
「……」
「会いたくないのか?」
うるさいな〜宮川君は。
こんな時までいちいち話しかけてこないでよ。
私にかまわないでよ。
バカじゃないの?
会いたいに決まっているでしょ。
会いたくて、会いたくて……
なのに、もう会えないなんて織川君。
「沢田、行くぞ」
「どこに?」
「アイツを探す」
「もういないよ」
「そんなこと分からないだろ? まだいるかもしれない」
「でも、授業が」
「お前にとって今一番したいのは何だ?」
織川君に会いたい。
せめてサヨナラを言いたい。
「沢田、サボるぞ」
私、沢田冬花は生まれて初めて学校をサボりました。
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