第8話 一人暮らし?
織川君と二人っきり…
どうしよう……メチャクチャ心臓がドキドキしてるよ〜
何かお話ししなきゃ…
お話ししなきゃ……
うぇーん、何を話せばいいのか分かんないよ〜
「妹とかいるのか?」
「妹はいないけど、お姉ちゃんがいるよ」
「仲いいのか?」
「うん、お姉ちゃん大好きだよ」
「そっか」
織川君は兄弟とかいるのかな?
織川君はスーパーの前で急に立ち止まりました。
「やばっ、朝飯の食パン買わなきゃ」
「食パン?」
「内緒だけど、オレって今、一人暮らしなんだ」
「ほ〜一人暮らし……ええっー織川君一人で〜」
「沢田って大げさだな」
「だって、だって、朝ご飯とか、夕ご飯とか、お洗濯とか、お掃除とかどうしてるの?」
「オレが自分でやってるよ」
織川君って天才かも。
織川君と一緒にスーパーに入ったよ。
学校帰りにこういう所に寄ったらダメなんだよね。
「どうして一人なの?」
「母さんがもうすぐ赤ちゃん生むんだ」
「そうなんだ」
「だから、お父さんの実家に行っているんだ」
「寂しくないの?」
「別に……もう慣れたよ」
凄いなー織川君って、だから大人っぽいのかな〜
織川君は食パンとマーガリンとカップ麺をカゴに入れました。
「冬花」
振り返ったらお母さんが立っていました。
あっちゃ〜
「あんた学校帰りに何やっているのよ」
お母さんが怒った顔をしています。冬花ピンチです。
「あの、オレが沢田さんを連れてきました。ごめんなさい」
織川君は私をかばってくれました。
「あらあら、織川君?」
「はい、はじめまして」
「だけど、学校帰りに寄ったら校則違反でしょ」
「すみません」
お母さん、織川君をいじめたらダメだよ〜
「お母さん、だって織川君は今一人暮らしなんだよ」
「沢田、そんなこと言わなくていいって」
お母さんが驚いた顔をしました。
「そうなの?織川君」
「はい」
「どうしてなのかな?」
「母はもうすぐ子供が生まれるので、父の実家に行ってます」
「そうなの大変ね」
「いえ、大丈夫です」
お母さんは織川君の頭を優しく撫でてあげました。
織川君は少し恥ずかしそうな顔をしました。
「今日はうちで晩ご飯食べて行きなさい」
織川君が私の家で晩ご飯を食べることになりました。(^O^)
◇◇
「いただきます」
「いっぱい食べてね」
織川君は少し緊張しています。
その表情がとてもかわいいのです♪
「お母さんっていくつなの?」
「28です」
「わかーい」
「17歳で僕を生みました」
「じゃあ、お父さんも若いんだ」
「はい、でも僕の本当の父さんは僕が2歳の時に事故で死にました」
「……そうなんだ、ごめんね悲しいこと聞いちゃって」
「大丈夫です。だから母さんには今のお父さんと幸せになって欲しいです」
「そう、そういえば今のお父さんは?」
「お父さんは大事な仕事で香港にいます」
「あら、大変ね〜」
「もう慣れました」
織川君はお母さん思いだな〜
だけど、私には織川君がとても寂しそうに見えたよ。
「織川君、いつでもご飯食べに来ていいからね」
「いえ…僕は大丈夫です」
「遠慮しないの!
それに、冬花も喜ぶからね」
「……」
おかあさん……
体中が熱くなってきました。
血液が沸騰しそうな感じです。
お母さん、急に変なこと言わないでよ〜
・・・・・⇒
「今日はご馳走様でした」
「またおいでね」
「ありがとうござます」
私は玄関先で織川君を見送りました。
「沢田、優しい母さんだな」
「うん、お母さん大好きだよ」
「大事にしろよ」
「うん」
「またな」
「バイバイ」
私は織川君が見えなくなるまで、彼をずっと見ていました。
小学生が一人暮らしなんて聞いたこと無いよ〜
絶対に毎日が大変だよ。
冬花は織川君のために何か役にたてないかな?
お掃除とか、お洗濯……ダメだ〜いつもお母さん任せだよ〜
お勉強……却下です。
お料理を作ってあげる……論外です。
お母さん、どうして冬花にいろんなこと教えてくれなかったのよ〜
私ってホントに何もできないよ〜
これじゃあ織川君に何もしてあげられないよ〜
でも冬花は決意しました。織川君にお料理を作ってさし上げます。
料理、洗濯、掃除、冬花は明日からガンバって特訓します。
織川君、ちょっとだけ待っていてね。
冬花、本気でガンバリます。
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